■大事なのは“これからどうするか”
明石教授はウクライナの避難民と比べるのなら、アフガニスタンでの紛争やシリアでの内戦、そしてミャンマーの軍事政権から逃れてきた人々などだという。
「例えばアフガニスタンで起こった紛争の影響で、日本に逃れてきたひとたちがいます。それでもウクライナの避難民のように瞬時に、そして手厚く入国させたわけではありません。扱いにかなりの落差があるといえます」
今回の受け入れに対して「パフォーマンスだ」とする声がある。それに対して、明石教授は「政府は国際世論を鑑みて判断したのでしょう。そして、パフォーマンスであることは決して悪いことではないと思います」といい、こう続ける。
「『手厚く受け入れるのは、なぜ今回が初めて?』という非難は理解できます。ウクライナ同様、戦争などを理由に自国から逃れたいと願う人たちはこれまでも存在していたわけですから。ただパフォーマンスでも人を救えるのなら、それを否定しなくてもよいのではないかと私は考えています。
大事なのは“これからどうするか”ではないでしょうか。ウクライナの件で『これまでと扱いが違うぞ?』と初めて気づいたひともいるでしょう。『対応に差があるのはおかしい』と思うなら、“差を埋めるにはどうすればいいか”という議論が必要になります。
日本のあるべき姿について世論が形成され、多くの政治家がそれを共有することができれば変化が生まれるかもしれません」
そして明石教授は「日本は国際協調主義の国であり、これまでも国際的に人道支援をしてきました。時に『お金をばら撒いている』ともいわれます。いっぽう“受け入れ”に関しては確かに消極的でした」と語り、こう結ぶ。
「経済的な支援も避難民を招き入れるのも、どちらも間違いではありません。時には物資の提供や資金面での援助のほうが喜ばれることもあるでしょう。いっぽう『日本に入国したい』という方もいます。当事者の期待とニーズを見落とさないようにして、判断するべきだと思います」