■出産前の面談や、母子検診にも一工夫する理由
泉市長は不必要な責任感を親に与えることが、出生率の低下に繋がると考えている。そのため「2つの不安を取り除く必要がある」という。
「1つ目はお金の不安で、もう一つは“もしもの不安”です。つまり『子供は欲しいけどお金がないから、やっていけないだろうなぁ』と『病気やリストラで働けなくなったらどうしよう』などの不安です。明石市は5つの無料化を筆頭に、この2つに向き合っています。
他にも養育費が支払われず困っている家庭に、市が金銭的に支援しています。また親御さんが病気になった時のために、明石の駅前で預かり保育もしています。ここまでするのは『明石市は市民の親戚です』というイメージを私が持っているからです」
泉市長は「誰1人見放したくないと、真面目に思っているんですよ」といい、こう続ける。
「例えば明石市では、“無戸籍の子供ゼロ”を目指しています。そこで出産前の面談に参加してくれたら、帰りに5,000円のタクシー券を渡しています。もし『5,000円いらないから母子手帳も必要ない』という人は、逆に心配ですよね。この対策をとったことで全ての赤ちゃんをいち早く把握し、その結果、お子さん9人の戸籍取得にも繋がりました」
また、母子検診にも一工夫しているようだ。
「明石市は母子検診の際、生まれた子供、一人一人の顔を全て確認しています。顔を見せてくれないならば、児童扶養手当を止めることにしていて。これは『実は子供が死んでいました』というケースをなくすためです。厚労省に掛け合って実現しました。
他にも保健指導を担当する保健師の数も、国の基準は1名のところを4名にしました。検診に来ない家には保健師が行き、スーパーの前で見張って待っていることもあります。というか、私が行くこともあります(笑)。そこまでしてでも、寄り添いたいんです」