■泉市長が批判に答える「半分正解で半分誤解」
変わり者と批判されながらも、「子供は社会のもの」という哲学で突き進んできた泉市長。「厳しい声に心が折れることは?」と問うと、こう答えた。
「子供の頃から批判ばっかりされ続ける人生で、昔からずっと少数派。自慢じゃないですけど、メンタルは半端ないんですよ(笑)。世間では“鋼メンタル”というみたいですが、私は自分のことを“スポンジメンタル”やと思っています。批判されると『なるほど、そう言う切り口か!』と吸収するんでね。
そもそも、批判って悪いことではないんですよ。何をしても批判する方というのももちろんいます。ただ批判には、その人の立場が関係していることや誤解しているケースが多い。『そういう批判があるなら前もって説明する必要があるな』と気づくこともありますし、批判そのものはむしろ栄養分ですね」
実際、ネットでは泉市長の少子化対策を批判する声が上がっている。例えば、こういったものだ。
《明石市は子育て世代が転入してきているだけでは?周辺の自治体が出生率低下してたら意味ない》
《単に子育てしやすいところに周辺から人が集まってるだけで国を挙げて真似しても国全体の総量としては変わらないっていう可能性もあるんじゃないの》
《他県からの流入が多い以上、明石生まれの女性に限定して出生率を調べなければ、少子化対策として成功しているとは言えないのでは?》
これらの声に対して、泉市長は「半分当たって、半分誤解があるかなと思います」といい、さらにこう回答する。
「日本の少子化は2つの点で、しんどいんです。1つ目は完全に少子化が始まっているということ。そしてもう一つは、出生率を上げても人の数自体が減っているということです。
国は特殊合計出生率2.08を目標にしており、明石市は’18年度で1.70です。’11年の1.50から0.2上げることはできましたが……。つまり相当なレベルで、市だけでなく県や国も参加して総合的に施策をしないと2.08は難しいと思われます。明石市だけが頑張っても、どうにもなりません。日本全体の出生率を上げるなら尚更です。
ただ大事なのは、“いかにソフトランディングするか”です。人口が減るにしても、減り方の程度を変えることはできます。そこで、明石市がひとまずの可能性を示すことはできると思います」
そして、こう続ける。
「『他の自治体から明石市に流入している』という指摘は当たっています。実際に『今の町で産めなくても、明石なら産める』と思った方が移住しているんですから。ただ大事なのは、移住してきた人たちが明石に定住しているということ。そして5つの無料化の影響で、明石で2人目以降のお子さんを産んで育てているということです。
『他の地域から人を取っている』という言い方も理解できます。ただ、『他の自治体が子供のことを大切にする施策をしていないから流れている』とも言えるのではないでしょうか。実は明石市の隣にある播磨町は、明石の施策を取り入れているんです。そして兵庫県にある41の市町村で、出生率が増えているのは明石市と播磨町だけ。近隣の町でも効果が出ているんです。
明石市の取り組みを国全体でやれば、産むのを躊躇していた層が『産もう』と傾くはず。そうすることで、日本全体で出生率の底上げができると考えています」