■「明石だけハッピーならいい」とは考えていない
明石市の施策を取り入れているのは播磨町だけではない。全国の市町村にも波及し始めていると泉市長は話す。
「昨年あたりから約10の自治体が明石のマネを始めたんです。誰でもできる、普遍性のある政治だと気づいたのでしょう。まぁ、『みんなできるやん。早よやっとけよ』とも思いましたけどね(笑)。
今年3月、大変驚いたことがありました。関西エリアの『住みたい町ランキング』で3年連続1位に輝いている西宮市の市長選挙で、所属政党もバラバラの候補者3人が明石市の施策同様に『18歳まで所得制限なしの医療費無償化』を公約に掲げたんです。
数字が語り始めたから、他の自治体にもリアリティを持って受け止められたのでしょう。『波がきたな!』と12年目にして思いましたね」
そして、泉市長は「『明石だけハッピーならいい』なんて考えていないんですよ。明石市の子供支援を全国の自治体も、県も国も取り入れてほしい。そして日本全体がいい方向に向かってほしいと、真剣にそう考えています」と語る。
「明石市の施策で日本全国、全ての問題が一瞬で解決するとは思っていません。でも、明石市はこれまで成功事例を示してきました。ですから、施策を取り入れる価値はあるのではないでしょうか。
また明石市は早い段階で第二子以降の保育料の無料化を行いました。すると、国も幼児教育・保育の無償化を’19年10月から始めました。明石市はその分、財源負担が軽減され、そのお金で’20年4月から中学校給食の無償化を実現することができました。今後、国や県がこども医療費の無償化に舵を切れば、明石市は小学生の学費無料化もできるのではと考えています。
つまり国が制度化して財源が国や県に置き換わると、明石市はさらに進んだ市民サービスを提供することが可能になるということ。明石市が、もっと住みやすくなるんです」