■「政府与党は審議を拒んでいる」
テレビ中継がなかった期間、国会で重要な審議が行われていなかったわけではない。むしろ、日本国のこれまでのあり方を一変させるような議論が進んでいたのだ。日本共産党所属の参議院議員の山添拓さんはこう語る。
「ウクライナ侵略に乗じて危機感をあおり、戦争できる体制を整えようという動きが加速しています。憲法審査会では、9条改正や、すべての権力を政府に集中させる緊急事態条項、さらには敵基地攻撃能力の保有や核共有の話まで出てきて、軍事には軍事で対抗するんだ、という政治の役割を放棄するような議論に終始しています。また、政府指定の企業や研究機関に指定基金から政府が資金提供して、軍事に役立つ開発をさせる“経済安全保障推進法”が可決されました。これにより、研究開発が軍事優先となる懸念があります」
もちろん、山添さん含む多くの野党議員が、国会の場でこうした流れを厳しく批判してきた。しかし、テレビ中継がないと、その声は国民に届きづらくなってしまう。
そもそも、与党側には国会での議論を避けようという動きがあるという。立憲民主党の国会対策委員長の馬淵澄夫議員は「政府与党が必要な審議を拒否し続けている」と主張する。
「ロシアによるウクライナ侵略、物価高騰、遊覧船事故、中身のない補正予算案など、課題が山積しているにもかかわらず、野党の度重なる要求に応じず、政府与党は総理が出席して行われる集中審議の開催を拒否し続けてきました。もし応じていれば、(集中審議はテレビ中継されるという慣習があるため)2カ月にもわたり国会審議がテレビ中継されないということは起こらなかったと言えます」
一方、与党側の言い分はどうなのか。自民党の国会対策委員長である高木毅議員にコメントを求めたが、期日までに回答がなかった。