2カ月「国会中継」なしのNHK 言い訳は「大相撲放送」の要望もあるから
画像を見る NHKでは、5月1日の憲法についての討論会を最後に放送が行われていないという

 

■政府への反対意見が伝えられる機会がない

 

5月3日の憲法記念日に、NHKは世論調査の結果を発表した。「憲法を改正する必要があると思うか」という質問に対し、「必要があると思う」という結果が35%、「必要がないと思う」が19%という結果だった。さらに9条改正についても、「必要ある」が31%と、「必要ない」の30%を上回った。

 

しかし、前出の山添さんは賛成派、反対派それぞれの意見が公平に届けられていないと考えている。

 

「岸田首相や国務大臣などが話す番組や報道はたくさんあるのに、それに対する反対意見や対案が紹介される機会が少ないと思います。国会中継もそうですし、テレビで与野党の政治家の討論する機会も少ない。NHKでは、5月1日の憲法についての討論会を最後に行われていません」

 

さらに、元自衛隊レンジャー部隊で防衛問題に詳しい井筒高雄さんはこう指摘する。

 

「岸田首相は防衛費をGDP比1%から、倍の2%へ引き上げるとぶちあげましたが、財源はどうするのか。国会での議論を国民にしっかり見てもらったうえで、参院選で審判を仰ぐべきです」

 

NHKはここ6年、“慣例”としている「予算委員会」や「代表質問」などしか中継せず、中継の回数も2016年以前より減らしている。たとえば、2016年は109回の国会中継が行われ、うち23回が「TPP特別委員会質疑」だった。

 

一方、2021年の中継は74回。すべて予算会議や代表質問などの“慣例”の放送だった。国会中継を求める声をどう考えているのか。本誌の質問に対し、NHK広報局はこう答えた。

 

「国会中継は、視聴者の皆様から充実を求める要望がある一方で、ニュースや生活情報、大相撲等の放送を求める幅広い要望が寄せられています。総合的に判断し、国会中継の放送を実施しています」

 

「NHK倫理・行動憲章」は、〈NHKは、公共放送として自主自律を堅持し、健全な民主主義の発展と文化の向上に役立つ、豊かで良い放送を行うことを使命としています〉という一文で始まる。

 

民主主義の根幹である国会の情報を正しく伝えることと、「生活情報、大相撲等の放送」は比べるべきものなのだろうか。また地上デジタル放送になって多チャンネル放送が可能になっているなか、他番組を理由に放送を限定することは理解されない“言い訳”だろう。メディアに詳しい作家の本間龍さんは、こう分析する。

 

「NHKの予算は、放送法第70条で国会の承認を得ると定められています。つまり予算を国会に握られているので、政権与党に気を使わざるをえない」

 

また、NHK元記者の大和大介さんも、こう推論する。

 

「いま、NHKのトップにいる前田晃伸会長は、政権寄りの人物。彼に忖度する人ばかりで周囲を固めていると聞きます。現場もあえて国会中継を増やして、危ない橋は渡りたくない、と考えているのではないか」

 

国会での審議を国民から隠したい政府与党、政府ににらまれてまで中継したくないNHK。両者の“共犯関係”が、憲法改正の流れを加速させようとしている。

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