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「衰弱したネコを保護しようとして手をかまれた50代の女性が重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症して亡くなり、ネコからヒトへ感染する可能性が考えられるようになりました」

 

そう話すのは宮崎大学の岡林環樹教授。SFTSウイルスは、もとはマダニからヒトへ、またはマダニから動物へ感染すると考えられていたが、ペットを介してヒトへ感染する事例が出始めたのだ。

 

国立感染症研究所によると、’17年以降、ウイルス性出血熱であるSFTSを発症したペットの飼い主や、診察した獣医師が感染した事例が、少なくとも10件は確認されている。

 

「感染すると重い症状を引き起こし、ネコの致死率は6割超、イヌは3割とされています。ヒトに感染すると、嘔吐、発熱、下血、意識障害などが起き、致死率は15~25%で、国内における感染症としては非常に高率です。特効薬やワクチンはまだなく、対症療法で治療するほかありません」(岡林教授 以下「」内同)

 

SFTSは、’13年に山口県で死亡例が確認されて以来、感染の報告は増加傾向にあり、昨年は過去最多の109人にのぼる。

 

「感染の報告は西日本が中心ですが、明らかに感染の流行が東に延びている傾向があります。背景には、野生動物の生息域の拡大や頭数増加などが考えられています」

 

これからの季節が最も危険だと岡林教授は警鐘を鳴らす。

 

「SFTSのピークは、5~7月になります。春から夏にかけてのリスクが高いと思います。マダニが活発になること、草むらの茂り、アウトドア活動の増加、薄着になることなどの要因が関連していると思います。ただ、街中や冬場でも感染する人やペットがいるので要注意です」

 

では、ペットや自身の感染を防ぐにはどうすればいいのか。

 

「ペットを外に出すのは注意が必要です。ネコなら室内飼いに、イヌの散歩では茂みには近づかず、散歩後には体にマダニが付いていないか確認して、もし付いていたら病院で取ってください。また、血液や排泄物、体液などから感染する恐れもあるので、体調の悪いペットにはなるべく直接触れないようにしてください。もし自身やペットにSFTSの症状や疑いがある場合は、速やかに病院に行き、『ダニにかまれた』『体調不良のイヌネコに触れた』と伝えることが大事です」

 

ペットが感染した場合の問題点も岡林教授は指摘する。

 

「人に感染させるリスクがあるのに、隔離の法的基準がないんです。設備のない動物病院では入院できず、入院できたとしても高い入院費がかかるため、飼い主の元に戻す場合もあります。簡易隔離施設を作るクラウドファンディングを始める予定ですが、行政による補償を伴うルール化が今後の課題だと思います」

 

ペットと自分の命を守るためにも、これからの時季は特に注意が必要だ。

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