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世界的なインフレが続くなか、IT企業のサイボウズは7月13日、自社の社員に最大15万円の「インフレ特別手当」を支給すると発表した。不景気の昨今、存続が危うい企業も多いなかでの、そんな民間のインフレ対策や地方自治体の対策などについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。

 

■諸外国にならい日本政府も対策を!

 

サイボウズは今年も例年どおり1月に給与を改定しましたが、想定外の大幅なインフレに早急な対応が必要だと判断したといいます。

 

最大15万円の特別手当はいわゆる賃上げではなく、今回のみ臨時に支給されるもの。日本国内の社員だと1日8時間、週4日以上働く人には15万円、週3日勤務だと12万円などが支給されます。

 

ネットなどで「うらやましい」との感想をよく見ますが、それが皆さんの実感ですよね。不景気の昨今、存続が危うい企業も多く、社員に特別手当を支給できる会社は少ないのが現実でしょう。

 

一方、ヤフーやNTTのように、リモート勤務を拡大し「日本全国どこに住んでもよい」と社員の居住地制限を廃止する企業が増えています。地方で暮らす選択をすると、住居費が大きく節約できます。また、産地が近いため生鮮食品などが安く手に入ります。

 

地方移住を認めるというのも、民間企業ができる一種のインフレ対策といえるかもしれませんね。

 

地方自治体の対策に目を向けてみましょう。たとえば企業への支援として、兵庫県は「中小企業等原油価格・物価高騰対策一時支援金」を実施しています。売り上げが減った中小企業や個人事業主などに、最大30万円の補助金を支給しています。

 

また、子育て家庭への支援には、岩手県奥州市の「子育て世帯への臨時特別給付金」。児童手当を受けている家庭に、子ども1人当たり3万円を支給します。

 

ほかにも、学校給食費の補助や子ども食堂の運営支援など、多くの自治体が住民の実情に沿った補助を行っているようです。

 

海外では国を挙げて、ガソリンなど燃料費が高騰した昨年秋ごろから、大胆な対策を行っています。たとえば、フランスでは昨年10月に、月給が手取り2000ユーロ未満の人に、100ユーロを支給しました。

 

さらに、コロナ禍の始まった’20年にはイギリスやドイツで、日本の消費税に当たる「付加価値税」の税率を引き下げました。国民の生活を見て、税金もそのつど必要な見直しを行っているのです。

 

ところが日本政府は、税率などを変えるのは“ご法度”とばかり、税金には一切手をつけません。

 

ガソリン価格の高騰にしても、高騰時にはガソリン税の一部を徴収しないとする「トリガー条項」の凍結を解除すれば済むものを、複雑な石油元売り業者への補助金でごまかしています。ましてや消費税減税などは一部の野党が口にするだけで、政府は聞く耳を持ちません。

 

岸田首相は亡き元首相の死を「国葬」などと政治利用する前に、そこで使われる何億円もの血税を苦しい国民に還元していただきたいものです。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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