■書店にもストリップ劇場にも逆風が吹く現在。「完全に足を突っ込んだ状態で見届けたい」
花田「見枝香は今、渋谷のHMVブックスで働きながら、相変わらず踊ってるのかな?」
新井「かなり踊ってますね(笑)。だから、今夜の読書会はとても楽しみでした」
9月24日夜、新井さんとは旧知の間柄の花田さんが、高円寺にオープンさせたばかりの小さな書店「蟹ブックス」で、2人によるトークイベントが行われた。テーマとなった『あなたの教室』(早川書房)は、かつて新井賞を受賞した『三つ編み』(同、レティシア・コロンバニ、齋藤可津子訳)の作者の最新作だ。
イベント終了後には、「今日は新井さんに会いにきました」と言いながら、女性ファンが手土産などを渡す光景も見られた。三省堂書店の有楽町店時代からの顔見知りという。
出版の世界では、今年に入ってからも、コロナの影響もあって、街の書店の閉店が続く。同様に、ストリップも存続の危機が続いている。70年前後には全国で300軒あった劇場が、現在は20軒を切った。
「ストリップ劇場は風営法で新規開業が厳しく規制されていて、一度閉めたら再建は困難。クラウドファンディングで再建される店がある一方で、ああいうものをなくそうという力も感じていて」
新井賞もそうだったが、以前より、SNSなどで発信力のある彼女には、何か策があるのだろうか。
「自分が変えるというより、すごく好きな世界だから、完全に足を突っ込んだ状態で見届けたいという気持ちはありますね」
そんな彼女の奮闘ぶりについて、シアター上野の総支配人の小林六美さん(70)は、
「見枝香さんは、業界でもキャラの立っているタレントさん。最近は『ストリップを新井さんのツイッターで初めて知りました』と話す若い女性のお客さんも増えました。彼女自身、この世界になじもうとして、先輩のおねえさんたちの踊りを熱心に見てたりするので、とてもかわいがられていますよ」
お客としてだけでなく、踊り子志望の若い女性も増えているそうだ。新井さんは、
「先日の四国・道後温泉のニュー道後ミュージックでは、女性客が半分以上でした。そういったコたちがストリップのよさをさらに広めてくれれば明るい未来もあるかなと思うし、同時に、ずっとファンだったおじさんたちが居心地よいまま通えるように続けられればと思うんです」
もちろん書店員、エッセイストとしての活動も継続中で、来年1月には、新しいエッセイの出版も決まっている。「人付き合いは苦手」と言いながら、“本屋の新井さん”や“ストリップの見枝香さん”を通じて、人と人がつながっていくところが彼女らしさなのだ。
彼女の噓のない踊りは、今夜も観客を魅了し、ライトの下で輝き続けている。