■翌年からド派手衣装の注文が殺到!
無事に成人式を迎えることができて一安心していたのも束の間、今度は「金さん」「銀さん」を見た後輩たちが押し寄せて来たという。
「『金と銀の羽織袴ができるなら、俺たちはもっと派手な羽織袴を着たい!』と後輩たちがさらなる無茶ぶりをしてきたんです。
本当は断りたかったんですけど、何とかしてあげたいという気持ちで要望に答えていたらどんどん派手な羽織袴が出来上がっていました。やはり1つ上の先輩の成人式が基準になるので、『この先輩よりも派手に!』とリクエストする人が多いですね(笑)」
実際に、今年「みやび」でレンタルした衣装の中には、蛍光のピンク、緑、黄色の羽がついたサンバの衣装のような羽織袴、全身金色の羽織袴にドでかい白いファーのストールを巻いた衣装などがあり、年々“派手の基準”が増しているという。
そんな“無茶な要望”が普通ではないと気がついたきっかけは、他県にお店を出店したときだったそう。
「東京や大阪にも支店を出したのですが、北九州ほど“無茶で大胆な”要望をする人が圧倒的に少なかったんです。
東京の方は少し遠慮しているところがあるのかもしれませんが、北九州の方は人との距離が近いというか、遠慮がないというか(笑)。“これくらい普通でしょ”という感じがしましたね」
デザイン性が高い衣装は注目を集める一方で、派手な格好をした新成人が問題を起こすニュースも少なくない。
実際にネットでは《毎年必ず取り上げられる北九州の成人式。はっきり言って、北九州出身者からしたら、恥以外の何物でもない…》《北九州の成人式怖すぎ。なんであんなんなの? テレビに流れてきたから見たけど、すごいダサい》などと厳しい声もしばしば。
そんななか派手な衣装を20年提供し続けるにあたって、苦労したことはなかったのだろうか——。
「派手な衣装のレンタルを始めた当初はクレームの電話が鳴りやまなかったことがありました。多いときでは1日10件も電話がかかってきて……。『お宅のせいで!』と、名前を名乗らず文句を言われることもよくありましたね」
それでもド派手な衣装を作り続ける理由を、池田さんはこう話す。
「派手な格好をしている人でも普段は真面目に働いている人がほとんどなのです。なかには公務員や自衛隊員の人もいます。
成人式は人生で一度きりのイベントなので、彼らはこの日のために何カ月も前から準備をしているんです。自分で働いたお金を毎月少しずつ持ってきてくれる人もいたりと、毎年楽しみにしている新成人の期待を裏切りたくないという気持ちが大きいんです。なので、どんな無茶な要望にもなるべく応えたいと思っています」
現在、「みやび」のド派手衣装は日本のみならず、世界にまで活躍の場を広げているという。
「昨年11月には、ニューヨークのブロードウェイで個展を開催したんです。オファーをくれた方も大成功を収めた! と言ってくれて嬉しかったです」
さらに今年はニューヨーク・ファッションウィークのオファーも来ているのだとか。
2人の“無茶ぶり”から始まったド派手な羽織袴は、世界をも魅了するファッションになりつつあるのかもしれない——。