震度6で原子炉倒壊の恐怖 福島第一原発内部の「土台」ボロボロも、東電は「問題ない」と楽観視
画像を見る 【図解】以前から指摘されていた土台部分の損壊(図解は取材と報道をもとに本誌作成)

 

■圧力容器が使用済み燃料プールに……

 

さらに、東電は〈圧力容器が落下する可能性はあるが、インナースカートという鉄骨に阻まれ30センチほどの落下で留まる。圧力容器に大きな破損は生じず、周辺の公衆に著しい被ばくのリスクは与えない〉と主張しているが、森重さんは「ごまかしだ」と続けた。

 

「30センチも落下したら大惨事になる可能性があります。圧力容器は真っすぐ落ちるわけではなく、支えているペデスタルのコンクリートの欠損が大きい側に傾いて落ちる可能性が高い。ちょうどその方向には、いまだ取り出せていない392体の使用済み燃料が入ったプールがある。傾いて倒れた圧力容器の上部がプールを直撃する恐れは拭えません」

 

使用済み燃料が破壊されたら、周辺は致死線量になって近づけなくなる可能性が高いという。

 

「その結果、今現在も継続的な注水によって安定を保っている燃料デブリも冷やせなくなります。2号機にも615体の使用済み燃料が残っていますから、冷やし続けられなくなれば次々と放射性ダストが空気中に出てしまうでしょう」(森重さん)

 

そうなると、12年前の福島原発事故より、さらにひどい結果に。

 

「福島県内はもちろん、首都圏全体が避難エリアになってしまう可能性も拭えません」(森重さん)

 

燃料プールの直撃を免れたとしても、被害は大きいと前出の上澤さんも続ける。

 

「かりに圧力容器が落下するだけだとしても、地震の揺れによって、土台のペデスタルには上下左右から大きな力がかかり、ぐしゃっと崩れるはず。そうなれば、30センチの落下では済まないどころか、圧力容器の破損が大きくなり、大量の放射性物質のチリが放出される危険があります」

 

■周辺住民に危険の周知を!

 

東電に、こうした専門家らの意見をぶつけたところ、次のような回答があった。

 

「格納容器の内部調査において、ペデスタル内外の詳細目視調査を行っており、インナースカート(ペデスタルの約1メートルの高さまで埋め込まれている鉄筋)に有意な変形は確認されておらず、露出している鉄筋についてもたわみ・変形は確認されておりません。かりにペデスタルの支持機能が失われたとしても、圧力容器の水平移動(傾き・倒壊など)は周辺構造部材に制限され、限定的に留まると考察しており、使用済み燃料プールに直撃することはないと考えています」

 

「考察」に「考え」。根拠の薄い楽観論だが、事故が起きてからでは遅い。

 

ペデスタルを補強するなど、なにか打つ手があればよいが、炉心周辺は人が近づけば死に至るほど放射線量が高い。そのため原子力規制委員会では、「万が一のことが起こった場合、いかに放射性物質の放出を抑えるか」という対処法を講じるよう東電に求めている。

 

「心配なのは、倒壊した場合の作業員や周辺住民の被ばくです。住民らにこうしたリスクがあることを伝え、ハザードマップなどを作成して、適切な避難計画を立てるべきです」(上澤さん)

 

3.11のときのように、“想定外だった”ではもう済まされない。

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