先日の国会でも、岸田自民党は旧文通費に関する審議を先送りに(写真:共同通信) 画像を見る

岸田文雄首相(65)は、物価高騰で疲弊する国民に対し、防衛費増額や少子化対策などの財源確保のために、今後さらなる家計負担を強いる可能性が極めて高いです。しかし、“自分たちのおいしい議員特権は死守します”では、国民の政治不信はますます高まるでしょう」(全国紙政治部記者)

 

国会議員には歳費(給与)やボーナスとは別に、「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費、以下“旧文通費”)という名目で、毎月100万円が支給される。その目的は国会法に「国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うため」と明記されているが、そもそも使途の基準や範囲はあいまいで、明細の公開や領収書添付の義務はない。余っても返納する必要もない。非課税で月額100万円を事実上自由に使えることから、“第2の給与”とも呼ばれる、議員特権を象徴するのが旧文通費だ。その使途を公開し、未使用分は国庫に返納するという法改正の議論が国会でまたもや先送りとなり、波紋を広げている。

 

「やはり自民党内で、法律を変えたくないという声があるからでしょう。政治活動のためだけでなく、私的に使っているような議員にとっては、こんなに使い勝手のいいお金はありませんからね」

 

こう語るのは、国民民主党・玉木雄一郎代表だ。

 

本来、旧文通費は政治活動で必要な郵送や通信、交通費、滞在費などの経費として支給されるもの。一般社会では、業務上でかかった経費は領収書を添付し、使途を説明したうえで支給されるのが当たり前だが、国会議員が受け取る旧文通費の場合は、先に経費をもらって、それを何にどう使おうがチェックすらされない。令和の時代に、まだこんなルールがまかり通っているのだ。

 

昨年11月、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党は、使途の公開や未使用分の返納を盛り込んだ議員立法を共同提出。しかし、岸田自民党はのらりくらりと審議の先送りを繰り返している。旧文通費の法改正がいっこうに進まないなか、すでに日本維新の会、国民民主党の所属議員は、領収書を添付した明細を党のホームページ上で自主的に公開している。

 

「自民党に大きな問題があるのですが、仮に法改正されなくても、野党第一党の立憲民主党も、自主的に使途を公開すべきです。そして野党一丸となって、自民党包囲網を作る。国民に対して法改正の本気度を見せるのです。税金からきているお金ですから」(前出・玉木代表)

 

じつは自民党だけでなく、野党の中にも使途公開、未使用分の国庫返納に消極的な議員たちはいる。その理由は、後ろめたい使い方をしているからだと勘繰るのが普通だろう。

 

旧文通費は、真面目に政治活動をしている議員も、そうでない議員も一律で同じ額が支給されるシステムに問題があると、玉木代表は指摘する。

 

「私が国会議員になって思ったのは、政治活動を頑張ってやっている人と、頑張らない人との差がありすぎるということ。一生懸命仕事をすれば、それだけ活動範囲が広がり、動けば動くだけお金がかかるんです。いっぽうで、仕事をしなければ経費はかからない。それでも支給される額は同じ。仕事をしない人のほうがお金は貯まるというおかしなシステムなのです」

 

“ズル”がはびこることで、きちんと政治活動の経費として使っている議員までもが疑いの目で見られる可能性が大いにある。

 

「この悪しき仕組みが続くのであれば、旧文通費は廃止すべき。そのかわり、一般企業と同じように、政治活動でかかった経費を衆・参それぞれの事務局に領収書を添付して請求するシステムに変えればいいと思っています」(玉木代表)

 

国会議員に支給されるお金が、家計がひっ迫するいまの状況を打開するための活動に充てられることを切に願うばかりだ――。

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