日本を訪れる外国人観光客の数はコロナ前の水準に戻りつつある(写真:時事通信) 画像を見る

新型コロナが5類に移行し、4年ぶりに本格的なにぎわいを取り戻した今年の夏休み。そのいっぽうで、街のクリニックの「発熱外来」は急患であふれると同時に、「薬不足」に陥っているという。

 

「ジェネリック医薬品のメーカーによる不正製造の問題が起きて以降、薬の需要に対して供給が追いつかない状態が続いています。特に、せき止め、喉の炎症を抑える薬、去痰剤の不足が深刻です。そのため、処方薬の代わりとして使われる市販薬も品薄になりかけています。コロナの再拡大や、インフルエンザやかぜが本格的に流行するシーズンになったらどうなるのか、今から心配です」

 

そう危惧するのは、くすりのケンコ薬局(東京都調布市)の加藤健一店長。発熱外来の予約がすぐに取れないとき、受診までの“つなぎ”として頼りになるのが市販薬。医療機関の事情に加え、観光客の増加が市販薬不足に拍車をかけることも懸念されている。その背景にあるのは、中国人観光客による“爆買い”だ。

 

中国政府は、コロナ禍で制限してきた団体旅行を、8月10日から解禁した。ドラッグストアの店主たちが懸念するのは、観光客が薬を買い占めることによって、本当に必要としている人たちの手に市販薬が行き届かなくなることだ。そんななか、気になる口コミが中国本土で出回っているという。今年6月10日、ニュースサイト「日経中文網」で“新・神薬”として、「パブロンゴールドA」や「イブクイック頭痛薬DX」など12個の日本の市販薬が紹介されていたのだ。

 

「12の神薬とは、中国人や台湾人に人気で、来日時に“必ず購入していく”という日本の医薬品のことです。’14年10月に中国の大手ポータルサイトに掲載された際、大きな話題となりました。“新・神薬”は、’23年のバージョン。’14年と比べて入れ替わっていますが、中高年向けの薬が多いようです」(中国事情に詳しいライター)

 

これらの市販薬の欠品だけでなく、そこから同じ症状のための薬に影響が広がっても不思議ではない。前出・加藤店長が言う。

 

「『パブロンゴールドA』は、昨年末から1月にかけて爆買いの対象になった市販薬の一つで、当店でも品薄になりました。その後、『龍角散ののどすっきり飴』が『のどの痛みに効く』といって、中国で転売されるほど買い占められたことで全国的に品薄になり、私の店舗でもしばらく入荷できませんでした」

 

購入制限を設けても効果は限定的で、9月以降の爆買いによる影響は避けられそうもないという。

 

急な発熱や、つらいせきの症状が出たとき、市販薬が手に入らないという状況は回避したいところ。海外ではオミクロン株の新たな派生型への置き換わりが進んでいるという報道もあるなか、“いざ”への備えはいまのうちにしておいたほうがよさそうだ。

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