■訪米を花道に首相交代シナリオも
「国民に根強い反対がある消費増税を実現させるためには、与野党の合意がなくては進みません。ですから財務省は、この超党派会議で与野党の合意をとりつけようとしている。過去に成功例があるからです」(鮫島さん)
成功例とは、民主党政権時代の2012年の“3党合意”(民主党、自民党、公明党)による消費税増税だ。これにより消費税は5%から8%、10%と段階的に引き上げられた。
「3党合意のときの首相は“ミスター消費税”こと立憲民主党幹部の野田佳彦氏。財務省と近く、今回の超党派会議にも、特別顧問として名を連ねています」(鮫島さん)
超党派会議には、ほかにも財務省寄りの議員たちの名がズラリ。象徴的なのが、筆頭世話人を務める小渕優子議員(50、自民党選挙対策委員長)と、岸田文雄首相(66)の最側近である元官房長官の木原誠二議員(53、自民党幹事長代理兼政務調査会長特別補佐)だ。
「小渕優子氏の父親は、言わずと知れた故・小渕恵三元首相です。彼は財務省のシンパでした。その娘を首相の座に押し上げて、消費増税に踏み切らせようというのが財務省のもくろみです。また、木原誠二氏も元大蔵官僚。現在でも、財務省と自民党のパイプ役を果たしています」(鮫島さん)
いったい、どのように増税が行われるのか。鮫島さんはこう語る。
「支持率が過去最低になっている岸田政権。その顔をかえてからという予測がひとつ。国民人気の高い石破茂さんや、にわかに麻生太郎元総理が推しはじめた上川陽子外務大臣などを新総理にして、ご祝儀相場で人気があるうちに、解散総選挙に打って出て勝利する。
それを受けて、与野党が歩み寄って、来年の春に消費税増税に向けた議論を始める。財務省が描いているのも、こんなシナリオです」
4月10日に岸田首相は米国を国賓待遇で訪問する予定だが、これを花道に岸田首相は退任するのではないかという説も永田町で出ている。最短で今春の首相交代はありうるのだ。
「いずれにせよ、このまま支持率低迷が続くと、岸田さんは9月の自民党総裁選に出るのは難しいでしょう」(鮫島さん)
一方で、岸田首相が自ら勝負に打って出る可能性もあるという。
2月18日、立憲民主党の泉健太代表(49)は、党の会合であいさつし、「3補選でどうせ負けるなら、全国で選挙してしまえという『やけくそ解散』もありうるといわれている」と語った。
亡くなった細田博之前衆議院議長、公職選挙法違反で起訴され辞職した柿沢未途前衆院議員(53)、裏金事件を受けて辞任した谷川弥一前衆院議員(82)の後釜を決める補欠選挙が4月28日に予定されている。
「米国から帰ってきて評価が少し上がったタイミングですぐ解散総選挙。議席はかなり減らしたとしても過半数を割ることはないので、その分を維新や、立憲の一部と手を組んで乗り切る。
私は岸田首相がそう考えている可能性も高いと思います。その場合は、岸田首相のもとで、増税への手続きが行われることになります」(鮫島さん)
■財務省の消費税19%の夢
元国税調査官で、『消費税という巨大利益』(ビジネス社)などの著者がある大村大次郎さんは、「財務省は消費税19%をもくろんでいる」として、こう述べる。
OECD(経済協力開発機構)は2018年に〈日本の消費税は将来的にOECD加盟国平均の19%にまで引き上げる必要がある〉と提言したことが報じられました。本来、OECDは日本の消費税などに関心はありませんから、財務省が働きかけて提言させたのは明白です」
日本は多額の拠出金を出しているため、財務省はOECDに影響力があるのだという。
岸田首相が続投しようが、首相が交代しようが、自民党政権が続く限り、“増税路線”は変わらないということか。
増税はどうすれば阻止できるのか。最後に鮫島さんはこう語る。
「“超党派会議”に参加しているかどうかも、ひとつの判断基準になります。また、野党だから消費税増税に反対というわけではない。党だけで判断せず、議員個人の主張を見ることも重要でしょう」