国が検討していた“移住婚”支援策が大炎上しました。
移住婚支援策とは、東京23区に在住か通勤する独身女性が、結婚を機に地方に移住すると、最大60万円の支援金を支給するものでした。8月27日に報道されると、「なぜ女性だけ?」「女性をお金で動かすのか」などの批判が殺到し紛糾。8月30日、自見英子地方創生担当大臣が事実上の撤回表明に追い込まれました。
東京一極集中に手を打ちたい目的はわかりますが、移住婚とはあまりにもお粗末な施策です。2007年に厚生労働大臣だった柳澤伯夫氏の「女性は産む機械」発言から17年、女性に対する意識は変わっていないことが明らかです。
社会制度や働く環境などの問題を棚上げにしたまま、補助金を出せば女性が動くという発想が腹立たしい。多くの若者が奨学金の返済や物価上昇にあえぎ、ジェンダーギャップに苦しんでいる。若者のつらさを理解しない官僚や政治家が考えたのでしょう。
いっぽうで、都会は住みづらいと思う方が多いのは事実です。家賃や物価が高く、満員電車での通勤も厳しい都会を脱出して、地方に移住したい方には「移住支援金」制度があります。国が「デジタル田園都市構想」の一環として、地方への移住者を2027年度までに年1万人に増やす目標を立て、支援する制度です。
移住支援金は、東京23区に在住または通勤する方が男女を問わず、東京圏以外に移住した場合に受け取れる補助金です。東京圏とは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の一都三県で、離島などを除いた地域を指します。
支援金は単身だと最大60万円、家族だと最大100万円。当初は地方での就職か起業が条件でしたが、2021年から東京での仕事をテレワークで続けてもOKになりました。
また、家族の場合、18歳未満の子どもは1人あたり最大100万円もらえます。さらに地方で起業すれば、起業支援金が最大200万円という大盤振る舞いです。
ただし移住支援金は、移住先の自治体によって支援金の有無や金額が異なります。移住したい自治体にお問い合わせください。
私は、地方に移住した方を取材したことがあります。夫婦と子ども2人の4人家族で、移住支援金を300万円受給したそうです。移住先の住まいは庭付きの戸建て住宅で、家賃は月3万円。職場は自宅から徒歩圏内で残業も少なめだから、通勤前に釣り、帰宅後に家庭菜園を楽しむ余裕ができたといいます。彼らの背中を押した移住支援金はよい制度だと感じました。
ですが、人気のある制度に便乗したのが、冒頭の移住婚支援策でしょう。ツッコミどころ満載の移住婚に批判が噴出することを予測できないほど、官僚や政治家は庶民感覚を忘れているのかもしれません。間違った施策には、私たちがNOを突きつける姿勢を持ち続けないといけません。