■国民全体の所得は上昇しているはず
では、石破首相が進めようとしている「金融引き締め」ひいては「円高・株安」は、私たちの暮らしにどう影響するのだろうか。
加谷さんは、「石破首相が自前の政策を進められること」を前提に、次のように見立てる。
「まず、これまでの数年間ずっと値上げされっぱなしだった、食品など、私たちの主要な購入品は、来年以降、値上げ幅が小さく、緩やかになると思われます」
これは、私たちには朗報だ!
帝国データバンクが発表した10月の値上げ食品は、主要食品メーカー195社でなんと2千911品目にものぼる。
「10月1日~」の値上げ各カテゴリーには、お菓子や飲料、ハム・ソーセージなど、食卓の必需品が相変わらず並ぶ。なかには30%以上値上げする品目もあるが……。
「これらの食品がここ数年、ずっと値上げが続いていたのは、世界的な物価の上昇、燃料費の高騰などの影響に加えて、円安による原材料費の輸入価格の高騰が大きな要因でした。
食品の中には原材料費が販売価格の6~7割を占める品目もあり、輸入価格は販売価格に大きく影響します。よって、石破政権で円高になることで、いままでのような値上げの波が緩やかになることが考えられます」
一方で、2025年も値上げの傾向が続く項目もあると、加谷さんは見立てる。
「石破首相は所信表明演説で『さらなる賃金上昇』『最低賃金=時給1千500円(全国平均)』を目指すとしました。
各企業は『賃上げ』を迫られ、社員・従業員への支払いが増加することになります。
すると人件費などサービス料が販売価格の多くを占める業種は、値上げせざるをえない方向になるでしょう」
その「人件費・サービス料」が多くを占める業種といえば、日本郵便、宅配業、公共交通機関、そして家事代行サービスや習い事の教室、スポーツジムなどが挙げられる。
ただ加谷さんは、「これらの業種の値上げは、根底に社員の賃上げがある」として、次のようにつなげる。
「石破さんの理想は、まず賃上げで社員や従業員の給料が上がることが前提です。そのうえでの一部業種の値上げですので、首相の思惑どおりにいけば、国民全体の所得は上昇しているはず。 まずは石破経済対策のお手並み拝見というところでしょうか」
10月27日投開票予定の衆院総選挙までに、私たちは新政府の政策や国会の動向を注視する必要があるだろう。