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人手不足が続くなか、パートの求人数が3年半ぶりに減少しました。データ分析を行うナウキャストが「民間パートの求人指数」を毎週公表していますが、10月28日のデータが前年同時期と比べて0.3%減少したといいます。

 

大きな理由は人件費の高騰でしょう。2024年10月以降の最低賃金は全国平均で時給1千55円。前年より51円上昇して、過去最大の引き上げを記録しました。

 

働く人にはうれしい時給アップも、中小零細の企業などにとっては痛手でしょう。仕方なく採用自体をあきらめる企業もあります。今いる人員で操業を続けようとすると、残業を増やす、営業時間を短縮するなどの対策が避けられず、退職者が増え収益が落ちて、「人手不足倒産」に陥る企業が増えています。2024年度上半期の人手不足倒産は163件。過去最多の2023年度を上回るペースで急増中です(帝国データバンク)。

 

また、ロボット化、デジタル技術で業務効率を改善するDX化に進む企業もあるでしょう。飲食店で最近よく見かける配膳ロボットは「時給92円で働く」といわれ、人件費との違いは明らかです。

 

問題は導入に必要なまとまった資金ですが、国は「業務改善助成金」などで後押ししています。業務改善助成金とは、事業所の最低賃金を引き上げ、あわせて設備導入を行った場合、導入費用の一部を補助するものです。時給の上げ幅や設備投資の費用などによりますが、助成率は75~90%と大きな支援です。

 

■時給アップを手放しで喜べない人も……

 

昨今、スーパーのセルフレジや飲食店の配膳ロボット、タブレット端末による注文などが増え、ロボット化、DX化の広がりを実感します。とはいえ、人手が必要な仕事は依然として多いです。また、1995年以降、15~64歳の「生産年齢人口」は減り続けています。人件費の上昇という流れは大きく変わらないと思います。

 

そんななか、時給アップを手放しで喜べない人もいます。“106万円の壁”を超えずに働く人たちです。配偶者が会社員の場合、年収を106万円未満に抑えれば社会保険料の負担がない「第3号被保険者制度」があります。これを利用するため、働く時間を調整する必要があるからです。

 

いっぽうで国は106万円の壁を撤廃しようとしています。第3号被保険者制度が始まった1985年当時は、夫婦の片方が外で働く片働き世帯が多かったのですが、いまや共働き世帯が7割を超えます(2023年、総務省)。106万円の壁が女性の就労を妨げるという意見もあります。“今すぐ撤廃”とはいかないものの、第3号被保険者制度を時間をかけてなくしていく方向は変えられないでしょう。

 

だとしたら、今のうちから106万円の壁を超えて働けるだけ働くことをおすすめします。時給アップの追い風を受けて、ロボット化、DX化に負けない、必要とされる人材を目指しましょう。

経済ジャーナリスト

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