■自分の意見を言い、相談者が理解するまで話す。「時間はかかりますが、不思議と疲れない(笑)」
『テレフォン人生相談』に出演したのは’92年から。当初は回答者として、途中からパーソナリティとして相談者に向き合ってきた。両方の立場を経験した今井さんが考えるパーソナリティの役割とは何か。
「相談者が言いたいことを引き出すことですね。だから、すごく焦っている人の場合はまず、落ち着かせなきゃいけない。『お年は?』『ご家族は?』といった基本的な質問をするのも、相手が話すことに慣れる時間を作っているんです」
しかし、言うべきだと思ったときは、遠慮せず切り込む。
「優しい回答者がオブラートに包んだような回答をしていたら、相談者本人が気づかないと思うんです。なので、特に、不満を訴えているような人には、『こういうことです』と少々強めでも言うようにしています。放送で使われるかどうかは別としてね(笑)」
相談者のためになると思えば、否定することもいとわない。「自分の意見は言う」がモットーだ。
「こちらが意見を言うと相手も反応する。それを繰り返すことでいろいろ引き出すことができるんです。相手に理解してもらえるまで話すので時間はかかりますが、私はね、不思議と疲れない(笑)」
そんな竹を割ったような性格の今井さんでも、10年に1~2回、悩むことがある。
「自分自身で、うまく回答ができなかったと思ったとき、家に帰ってからも、あれで通じたかな、どういうふうに言ってあげたらよかったんだろう、と繰り返し考えてしまうことがある。なんとかいい方法を考えてあげたかったなと思うのは、女性の相談者が多いかな」
かつて、女性の悩みといえば嫁姑問題だった。いまもその傾向は変わらないが、近年は、嫁からの相談よりも、嫁にいじめられるという姑からの電話が増えたという。
いっぽう、男性の相談で思い悩んだのは1度だけ。
「結構セクシュアルな話なんだけど、結婚した若い男性が、奥さんから拒まれちゃったらしくて。
これは、奥さんをその気にさせるすべを知らないのでは……? と思いましたが、あんまり深くは言えないし、なんて言えばよかったのかいまだに悩んでいます」
今井さんが担当した約30年の間で、最も印象に残った相談を尋ねると、ある高級ブランドの名前をつぶやき、思い出し笑いをする。
「バブルのころです。息子の結婚に反対する父親からの相談だったんですが、うちの息子は、ブランドのスーツを着るくらいの生活力がある、と。でも、結婚をしたら、息子が貧しい生活をすることになってしまうのでなんとか結婚を止めたい、と訴えるんです。こんな父親がいるんだ! と驚きました(笑)。また母親にも、お嬢さんを嫁に出したくない人が多かった。最初は嫁ぎ先でいじめられるかもしれないとか言っていたけれど、結局は、うちのほうが相手の家よりも格が上だということが言いたかったというね。あの時代は、その手の相談が結構ありました」