■ライブコマースで日本を盛り上げたい
その後、燕さんは中国で流行していたライブコマースを日本に初めて取り入れた。 ライブコマースとは、タレントや専門家が商品を宣伝して通信販売する“テレビショッピング”に近いが、違うのは相互コミュニケーションができる点だ。
日本にはライブコマースができるECサイトがなかったため、自社でプラットフォームを作り、’21年にファッションをメインとしたライブコマース機能付きの通販サイト「1899モール」を立ち上げた。自身も’23年から毎朝6時から、多い時で1日2回、TikTokでライブ配信を行っている。
「ライブ中はチャットで直接お客さまの声を聞くことができます。あるとき、商品を紹介していたら『LLサイズでも着れますか?』とお声をいただき、ハッとしました」
試着できない通販で、サイズ選びは買い手にとって重要だ。燕さんはサイズ展開をフリーサイズ中心からM、L、LLなど増やし、客層は若者から60代などのシニア世代まで拡大した。サイズさえあれば、おしゃれで流行の服を着たいというのは、年を重ねた女性でも変わらなかった。
最初はほとんど誰も見ていなかったライブ配信は、継続するうちにリアルタイムの視聴者が7000人を超える日も出てきた。ショッピングという枠を超え、燕さんの配信を楽しみにするファンもいるという。
「いずれ日本でのライブコマースも、誰もが毎日いつでも楽しめるツールにしたい」
そのために、燕さんは昨年から「ジャパネットたかた」から講師を呼ぶなどして、ライバーの育成講座をスタート。さらに現在は、働きたい女性や起業したい女性を応援すべく、ライブコマースの新たなビジネスモデルの確立を目指している。
「ライブ配信なら家でもできますから、例えば、子育て中のお母さんでも、合間をみて挑戦できます。さらに店舗を持つわけでもないので、資金もほとんどかかりません。私たちが商品を多く作るだけで、在庫も抱えずフランチャイズのように働くこともできます。なんといっても一緒にライブコマースを盛り上げてもらうことができます」
かつてもやしばかり食べていた“博多弁”の中国人留学生は「ライブコマースで日本を盛り上げたい」と一層目を輝かせて話す。ただ実直に走り続けて、今はもっと先を見ている。
画像ページ >【写真あり】リアルタイムの視聴者が7000人を超える日もあるライブ配信(他3枚)
