「したい人、1万人。始める人、100人。続ける人、1人。あなたはどの人になりたい?」
こんな言葉をライブ配信で朝から視聴者に送るのは、ファッションブランド「ABITOKYO」などを展開する年商50億円超のアパレル会社の社長、燕泳静さんだ。
複数のプライベートブランドを手がけ、日本初のライブコマース機能付ファッション通販モール「1899mall」を運営する燕さん。日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を始め、主要なネット通販サイトでも事業を展開し、若者からシニア世代まで幅広く支持されている。3月には『続ける力、諦めない心』(太陽出版)という本も上梓。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
社長として多忙な日々を送る燕さんだが、じつは、20年前は、来日したばかりの“極貧”中国人留学生だった。
中国の江西省出身の燕さんは、人情深く穏やかで温厚な父と、てきぱきと働くハッキリとした性格の母のもとに、3人兄妹の末っ子として生まれた。燕さんいわく“普通の家庭”で育ち、高校の選択授業で当時選ぶ人が少なかった日本語クラスを選択。語学が得意だったこともあり、高校卒業後に本格的に日本語を勉強するため日本への留学を決めた。
選んだ先は福岡の日本語学校だった。
「高校から紹介されたのが北海道の大学と福岡の語学学校の2つでした。大学にも興味があったのですが、北海道といえば、じゃがいもやとうもろこし、カニなど美味しいグルメが揃ってることも知っていました。“北海道に行ったら絶対に食欲を抑えられない”と思って福岡の学校に決めました(笑)」
希望だけを胸に来日したものの、日本での生活は初日から悪戦苦闘の日々だった。
「日本の物価の高さに驚きました。当時、ペットボトルの水が中国と比べて10倍の価格だったんです。それ以外の食料品も軒並み高く、値段を見て思わず、“こんなに高いの!? これじゃ餓死しちゃう”と思ったのを覚えています」
留学費用は両親に出してもらったが、生活費は自分で賄うつもりだったため、節約生活を心に決めた。