■2800万人が更新時期に…「期限があることを知らない人も多く」
昨年12月以降、大幅に増加しているのが、冒頭のAさんのような“有効期限切れ”問題だ。前出の上所さんは、こう指摘する。
「マイナンバーカードには“電子証明書”が搭載されていて、その有効期限は発行から5年間です。また、マイナンバーカード本体にも有効期限があり、こちらは発行から10年間です。いずれの場合も、有効期限が切れる数カ月前には自治体から通知が来ますが、期限があること自体を知らない方も多く、見逃されがちになっています」
特に今年度は、更新時期を迎える加入者が2768万人と2023年度の約12倍に(総務省調べ)。今後も、期限切れの多発が懸念される。
加えて、「“資格情報のお知らせ”と“資格確認書”の混同によるトラブルも発生している」という。
“資格情報のお知らせ”とは、マイナ保険証でトラブルが生じた際に、マイナンバーカードといっしょに提示することで保険診療を受けられるようにするための書面。一方、“資格確認書”は、原則マイナ保険証の利用登録していない人にのみに送付され、保険証と同様に単体で使用できる書面だ。
「ところが両者は、見た目も名称も非常に似ているので、本来ならマイナ保険証といっしょに提示しないと使えない“資格情報のお知らせ”を“資格確認書”と間違えて医療機関の窓口に単体で提示してしまい、『なぜ、使えないのか?』と、窓口でトラブルになるケースが増えています」(上所さん)
厚労省の付け焼き刃な対策が、混乱を助長しているというわけだ。こうしたシワ寄せは、患者の命をも脅かしかねない。救急現場の医師から、こんな切実な声が……。
「車椅子やストレッチャーで運ばれてくる救急患者は、そもそもカードリーダーで顔認証なんてできません」
