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3回戦に突入し、ますます盛り上がりを見せている第107回全国高校野球選手権大会。しかし、球児たちの熱戦と同じくらい注目を集めてしまっている“不祥事”が――。

 

8月10日、高校野球の名門の広島・広陵高等学校(以下、広陵)が甲子園大会2回戦への出場を辞退した。同校の校長は同日午後、大会本部を訪れたあとに会見を開き経緯を説明したが、事態が収束する気配はない。

 

辞退のきっかけは、同校野球部のいじめ事件だ。今年1月に1年生部員が野球部寮で本来禁止されているカップ麺を食べたことを理由に、複数の2年生部員に集団暴行を受け、学校は暴力行為の存在を認めて2月に広島県高野連に報告。3月に日本高野連は厳重注意措置を取り、加害生徒4名には1カ月間の公式戦出場停止を指導した。被害を受けた生徒は退部し、3月末に転校していた。

 

このことは大会前に公にされておらず、8月上旬から被害者の母親を名乗るSNSアカウントによって、事件や学校側の対応についての詳細が拡散され、SNS上で同校の出場辞退などを求める声が殺到。

 

この流れを受け、1回戦前日の6日夜に学校側は、SNSで拡散している情報について見解を発表した上で、上記した厳重注意を受けたことなどを説明した。しかし、その後も2年前に野球部の元部員が監督やコーチ、一部の部員から暴言や暴力を受けていたという“新たな告発”がSNSで拡散され、波紋はますます大きくなることに。

 

1回戦勝利後に、昨年3月に元部員から被害の申告を受け、聞き取り調査を行ったものの指摘された事実は確認できず、現在は第三者委員会に調査を委ねていると学校側は説明したが、加害者とされる生徒らの氏名や顔写真がSNS上で拡散されるなど、批判は過熱し、出場辞退を決断することとなった。

 

広陵の校長は、10日の会見冒頭で出場辞退の申し出が受理されたことを報告し、「今大会に出場しているチームの皆さま、高校野球ファンの皆さまほか、大会主催者である日本高等学校野球連盟、朝日新聞社、広島県高等学校野球連盟、各方面の皆さまに多大なご迷惑、ご心配をおかけしましたこと、深くお詫びを申し上げます。誠に申し訳ございません」と深々と頭を下げた。

 

続けて「新しい事実が発覚したわけではない」としつつ、SNSでの批判や反響を「重く受け止め」出場辞退に至ったと説明。一方で、「現在、SNSなどで配信されている画像や投稿の中には事実と異なる内容、憶測に基づく投稿、生徒の写真など、関係しない生徒への誹謗中傷や加害の予告なども見受けられます」といい、「生徒及び教職員の名誉と安全を保護するために」誹謗中傷は辞めるよう訴えた。

 

そして、SNSなどでの誹謗中傷が大会運営に大きな支障をきたしていることや、生徒が登下校時に追いかけられたこと、寮の爆破予告があったことなどをあげ、「生徒、教職員、地域の方々の人命を守ることが最優先」として、出場辞退を決めたと説明した。

 

出場を辞退し、校長が会見――。やれることはすべてやったように見える広陵だが、会見後も同校への批判は収束する兆しはなく、今も連日ワイドショーなどで取り上げられ続けている。

 

果たして、何が事態をここまで大きくしてしまっているのか。「謝罪のプロ」こと危機管理コミュニケーション専門家の増沢隆太氏は、この会見について「1番やってはいけないこと」をしたと厳しく評価する。

 

「今回の会見は謝罪会見ではないのかもしれませんが、事態収拾を目指して説明されたはずなんですが、結局“身内の論理”と言いますか、自分たちが悪いのではなくて“SNSが悪い”という趣旨のことを述べられていました。お詫びの席で、他人のせいにするのは1番やってはいけないことです。

 

それから、SNSでの脅迫などの犯罪行為はもちろん論外ですが、SNSでの反響がなければ“もみ消していたんじゃないか”という疑念が大きいのに、そこに対する回答がなかった。回答がなかった。それどころか“SNSのせいで出場辞退に追い込まれた”と聞こえるような内容で、まさに他責にした。これでは高校側への同情は生まれないでしょう」

 

また、会見冒頭で謝罪したのが「チーム、ファン、野球関係者、スポンサー」であり、被害生徒に触れなかった点についても「事件に対する認識が薄い」と指摘する。

 

「まずは、『とにかく被害者の生徒が1番なので、そこに対するケアが足りないのは本当に申し訳ありません』みたいなところから始めないのかなっていうのは、見ているこちらがハラハラしました。

 

記者からの『どこでどんな対応をすべきだったか』との質問に対しても、『円満に終わる、両者が納得して終わることが最優先だった』と発言しています。要するに被害者の口さえ封じていれば、いいんだろうみたいな風にすら見えてしまいますよね。

 

結局、被害生徒や暴力事案への認識が薄く、“親の過剰反応による風評被害”で出場辞退に追い込まれた自分たちは被害者だという本音が透けて見えてるので、これだけ批判を浴びているのだと思います」

 

SNSでこれほど炎上しているにも関わらず、危機対応を怠ったことは「重大な責任の欠如」であり、まさに「身内の論理が働いた」と指摘する。

 

「強豪校ですから、これまではおそらく父兄も押さえつけることができていて、唯一怖いのが高野連だと思うんです。

 

ところが、身内で固めただけでは済まないというのが今の環境なわけで、そこを全く考えてなかったとしか思えません。これは組織統率者としては失格だと思います。SNSが正しいという意味では全くありませんが、その影響を抜きに運営ができるはずがなく、感覚がアップデートができてないと言わざるを得ません」

 

増沢氏は今回の会見に点数をつけるなら「0点」だといい、今後事態を収束させるには「(発端となった)暴行事件の究明」が必要になるという。

 

「ネット世論を抑えるのであれば、悪いのは“いじめの犯人”で、それが炎上の原因なので、“犯人を見つけて処分しました”とならないと、多分ネットの怒りは収まらないと思います。

 

校長は、広島高野連の副会長を辞任したことを発表して、責任を取った風でしたが、これは政治家などでありがちな“ナントカ委員を辞任した”と同じで、“だから何だ”としか思えないような引責です。加害生徒をきっちり処分したり、監督を解任するといった、明確な責任追及がなされなければ収束しないと思います。結局、痛みを伴わない責任では誰も評価しないでしょう」

出典元:

WEB女性自身

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