「“女性初”が注目されないようになってほしい」異色経歴から地銀“頭取”になった河合祐子さんが語った“願い”
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■コミュニケーションをとる必要性を学んだ

 

「日本はバブル期で世界に注目されており、中国も台頭しておらず、ニューヨークで働くアジア人も少ない時代で、ニューヨークの本店でも働かせてもらえました。国籍・年齢・学歴も多様ななかで、丁寧なコミュニケーションをとる必要性も学びました」

 

そして1991年、27歳で「まだ勉強をしなきゃ。英語をもっと学ばなきゃ」と、アメリカの大学院(ペンシルベニア大学ウォートン校MBA)へ進んだ。

 

「勤務先に辞めるつもりで相談をしたところ、まさに多様性の観点から、上司と人事の方が『会社としてサポートすべき』と休職のシステムを作ってくれました」

 

大学院でも、日本人の同級生とともに、チャレンジを試みた。

 

「当時、トヨタ自動車の製造工程や、日本文化に関心がある時代で、教授に、『日本の文化や製造業についてのプレゼンテーションをさせてください』とお願いしました」

 

その後、ベンチャー企業を経て、2003年、日本銀行に入行。2014年に高知支店長となった。

 

「高知の人は明るく、人と距離を詰めるのも早く、オープンカルチャーで県外から来た私も仲間として扱ってくれました。お酒もおいしいし。今は、ドクターストップで飲めないのが残念です(笑)」

 

2018年同銀行欧州統括役兼ロンドン事務所長などを歴任。その後、三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社CEOに。その間も、高知に足を運ぶうちに、アドバイザーにと誘われて、2023年から高知銀行で常勤の副頭取に就いた。

 

副頭取としては、昨年10月、メルカリとの業務提携も締結した。

 

「地域は人口が減っていますが、一方、活気のあるネットのサイバー社会を通じて、銀行が新しい社会や人の役に立つためにはどうすればいいか。

 

買い物や取引、情報の取得や発信もスマホだけでできる今の時代に、メルカリさんと昔ながらの銀行が組むことで、個人や事業者さんのお役に立てるのではないか、お互いに補完できることもあると考えました」

 

そして、今年6月、頭取に就任。

 

「よく、頭取として何をやりたいかと聞かれますが、私は“何かをやる”は、目的だと思っていません。それは一つのツールでしかありません。実現したいものは……人口が減少していくなかでも私たちは、便利に暮らしたい。人口が少なくなっても不自由はしたくない。そのためにどうすればお役に立てるのか。この土台を忘れずにいたい」

 

そんな河合頭取に、「女性が働く」ことについて尋ねると、

 

「私は、ロールモデルを押し付けたくないんです。本当に人それぞれでいい。家庭を切り盛りする役割も尊いですし、男性女性に関係なく、全員が“お金をもらう仕事”をしなくても、それぞれみんな頑張ってと本心から思っています」

 

としたうえで、

 

「あえていうなら『仕事は、けっこう楽しい』と、知ってくれるとうれしいです。少し責任のある立場に立って人の役に立てるのはおもしろいです。どんな仕事であれ、自分のいる場所や自分がやっていることをおもしろいと思えることが大事です」

 

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