浜崎あゆみ(写真:本誌写真部) 画像を見る

高市早苗首相(64)の「台湾有事」答弁から1カ月が経ち、日中関係の冷え込みが進むなか、日本人アーティストの中国公演に大きな影響が出ている。

 

「中国でも絶大な人気を誇る歌手・浜崎あゆみさん(47)が29日に中国・上海で予定していた公演が中止に。浜崎さんは翌日に更新したインスグラムで《五日間かけて上海のステージを本日組み終えましたが、午前に急遽公演中止の要請を受けました》と明かしていました。

 

そのほか、28日に上海で行われた『バンダイナムコフェスティバル2025』のステージで、歌手の大槻マキさん(52)が歌唱中、突然照明や音響が止められ、強制的に中断させられるという事態が発生。唖然とした様子で退場させられる大槻さんの姿は、日本のSNS上でも拡散され、衝撃が広がりました」(WEBメディア記者)

 

いずれの公演中止の詳細な理由については明らかになっていないが、一部では習近平国家主席(72)をはじめ中国当局が「公演中止に関与した」といった憶測も広がっている。そこで本誌は、中華圏の社会事情に詳しい紀実作家の安田峰俊氏に話を聞いた(以下、カッコ内は安田氏の話)。

 

「中国当局が、浜崎あゆみさん、大槻マキさんなど個々の公演について、例えば『浜崎あゆみに公演させるな』と細かく指示をするようなことはないと思います。さらに言えば、『日本人歌手にライブをさせるな』という関わり方もない。当局という表現は曖昧ではありますが、少なくとも中国共産党中央部が関わっているとは考えにくいでしょう。

 

現地の業者が自粛したか、もしくは、上海市のレベルで圧力がかかったものと思います。個別の話なので分かりませんが、大槻さんについては、ステージ上で歌い始めてから止められるという流れを見るに、主催者側に意図があったとは思えません。自粛するなら、もっと早く判断していたはずです。そのため、上海市のいずれかの部門から圧力がかかったと思われます」

 

だとすれば、SNSであふれている「公演中止は習近平の意向」というような言説は筋違いのように思えるが……。

 

「日本に対して『制裁をしろ』というのは間違いなく党中央部の方針ではあります。ただ、現在の中国は”忖度”をする体制です。たとえば、”ゼロコロナ政策”というものがありましたが、そこに習近平国家主席の意思があるなら、各部門が忠誠を示さないといけないんです。それを示さないと出世が難しくなるといった事情がある。なので、党中央部が、訪日自粛や飛行機の減便を直接指示することはなく、各部門が忖度して意思に沿うような行動を取るんです」

 

いっぽう、中国での活動に現時点で支障を受けていないアーティストが、メイリア(33)だ。11月22日には、北京にあるスタジアムで大型ライブを敢行しており、ライブ後に更新したインスタグラムでは、中国語のキャプションと共にステージ写真を複数アップし、ライブ成功を報告していた。

 

そんなメイリアだが、実は11月18日に中国のSNS「weibo」で、《中国は私にとって第二の故郷であり、私は永遠に一つの中国を支持する》《中国の友人たちは皆私が大切に思う家族》と投稿。この投稿をめぐって、日本のSNSでは「中国を支持する意思表明をしたからライブが行えた」といった意見が噴出したほか、「中国が踏み絵を踏ませている」といった批判もあったが――。

 

「公的機関が”踏み絵”を迫るようなことはないでしょう。また、weiboでの投稿が自身の意思によるものなのか、これはメイリアさん本人にしかわからないことです。ただ、中国人なら誰でも、メイリアさんのような意思表示をしない場合、浜崎さん、大槻さんのような事態が起こると容易に想像できますし、もちろん、それはメイリアさん周りの中国人スタッフも同じです。

 

また、台湾や香港のアーティストが『一つの中国を支持します』と表明し、中国での活動に支障が出ることを避けるのは、よくある話。意思表示をせずに余計なトラブルになるなら、とりあえず言っておくんですね」

 

今後、中国での活動を円滑に行うため、メイリアのように「意思表示」をする日本人アーティストが出て来るのか。安田氏は、「その可能性は十分にあると考えますが、結局は中国側のスタッフがどれだけSNS運用の裁量権を持っているかが鍵になるでしょう」とした上で、こう話した。

 

「アーティスト関連の話ではありませんが、’20年に新疆ウイグル自治区の人権問題が浮上した際、外資系のアパレル企業の多くが『強制労働で生産された綿は使わない』という声明を出しました。いっぽう、中国の意向に沿うことを表明し、現地での経営の安全化を図る企業もありました。

 

例えば、日本のアシックスは’21年3月、weiboの公式アカウントで、新疆ウイグル自治区産の綿を引き続き使用するとし、『一つの中国の原則を堅持する』『中国に対する一切の中傷やデマに反対する』と表明しました。当初、広報部は投稿について、本社の了承を得ていたと説明。投稿が国際的に注目されたこともあり、後に『許可を得ずに出した』と転換していました」

 

さらに、コンサートが中止になった後も騒動は続いている。浜崎は11月30日のインスタグラムの投稿で、《14,000席の空席ですが、世界中のTAの愛をとても感じた、私にとって最も忘れられないショーの一つでした》(原文は英語)と綴り、観客のいない会場で本番さながらのパフォーマンスをする様子を公開した。

 

この投稿は、浜崎が「無観客でも公演を行った」として日中のファンの感動を呼んだのだが、一部の中国メディアは12月1日、公演の関係者がリハーサルの様子を撮影した写真が、「無観客公演」として拡散された報道。つまり「無観客公演」が”ウソ”だと主張したのだが、この一連の騒動について、安田氏は以下のように話す。

 

「浜崎さんの『無観客公演』は感動的であり、その上、当局方針への反抗と読めなくもないですよね。報道機関として、そのような雰囲気が広がっていくことを恐れたのではないでしょうか。これは浜崎さん個人に対する攻撃というより、浜崎さんを支持する声や、中止への抗議の声が国内で高まらないように、とりあえずフェイクニュースをぶつけて『潰した』というのは考えられます」

 

浜崎をはじめとする、今回の中止騒動を受けて、安田氏は「今後しばらくは日本人アーティストの活動に影響が出ると思います」と話すが、人気ユニットYOASOBIがつい先日、来年にアジアツアーとして香港公演を行うことを発表し、一部では心配を集めていたが、以下のような見解を示した。

 

「従来に比べて自由が制限されたとはいえ、香港は『一国二制度』が適用された特別行政区です。そのため、先ほど紹介した”忖度”の仕方も変わってきますし、YOASOBIの香港公演は中国本土とくらべれば無事に行われる可能性も高いのでは」

 

主張に関係なく、すべての日本のアーティストが今まで通り中国で公演を行える日はいつになるのか――。

 

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出典元:

WEB女性自身

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