■ 「部下との意思疎通」に苦戦したことが、人生の転機に
大場さんの人生の転機は、50歳を目前にした2012年ごろ。仕事上の人間関係で暗中模索した経験だった。
「当時いた会社で女性新入社員の指導をする立場になったのですが、信頼関係がうまく築けずいろいろと試しました。今思うと、私は昭和の人間なので“飲みニケーション”を試してみたり、どう考えてもNGなパワハラまがいな対応をしたり。そういったものが良くなかったんでしょうね。
何をしても噛み合わず、その時期が精神的には1番辛かったかもしれないです。ある意味自分が今までやってきた、正しいと信じてたことが“違うよ”っていうことに気がつくまでに時間がかかっちゃって、悶々としてたって感じですかね」
いわゆる“中年の危機”だったのかもしれないが、大場さんは持ち前の前向きさで問題の解決に向けて行動に出る。
「『今までのやり方じゃダメなんだ』と思ったから、『じゃあ、外に勉強しに行こう』と思ったんです。そこからセミナーに参加して心の勉強みたいなことを始めたら、それまでは家と会社の往復だったのが、それ以外の居場所となる“サードプレイス”が見つかったというか。新しいコミュニティが広がったことで、100キロマラソンに誘ってくれる友だちにも出会えたわけで、ここら辺がたぶん1つの人生の分岐点だったと思います」
最近全国各地で開催されている体験講座などで大場さんに出会った人たちは、「江戸走り」の面白さ以上に、口を揃えて大場さんの“人柄”を絶賛するが、大場さんの人柄はこうした努力によって少しずつ形成されていったのかもしれない。
2018年に長年勤めた会社を退職した後は、職業訓練でウェブデザインも学んだという大場さん。2020年からは建設機械のレンタル会社に再就職したが今年5月に退職。気がついたら「江戸走り」がすっかり“本業”になっていたという。
