■年末年始の病院は4~6時間待ちも……
こうした医療機関の混雑が特に深刻となるのが、年末年始の時期だ。地域のクリニックは基本的に休診となり、開いているのは休日診療所や救急外来のみ。前出の伊藤医師は、「患者が殺到して、4~6時間待ちやキャンセル待ちになることも珍しくない」と語る。
「今年のインフルエンザは、高熱、喉の痛み、咳といった症状が目立つほか、下痢などの消化器症状や、目の充血や中耳炎、味覚障害など、コロナに似た症状を訴える人もいます」(伊藤医師、以下同)
このような症状をかかえながら、病院にかかることができない状況は非常にこたえる。「インフルエンザかも」と思うような高熱が出た場合は、いったいどのように対処すればよいのだろうか。今回は伊藤医師への取材を基に、対処法をまとめた。
まずは、休日診療所や夜間急患センターの情報をインターネットなどで探し、問い合わせをしよう。当日中の予約がとれない、もしくは長い待ち時間が発生する場合が高い。こうした場合を想定し、次のような“備え”が必要だ。
「必須になるのが、解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンです。体温が38度を超えると脱水が進み、42~43度に達するとタンパク質が変性し、脳神経へのダメージや痙攣、後遺症のリスクも出てきます。効果が出るまでに15~30分ほどかかるため、40度近くになる前に使うことが重要です」
受診を待っている間にも、症状が悪化すれば危険だ。重症化を未然に防ぐためにも、解熱鎮痛剤はできれば家族分を常備しておき、38.5度をめどに使用しよう。熱が37度台でも、関節痛や頭痛がひどい場合は服用を。
加えて、喘息の持病がある人は、特に注意が必要だ。
「ふだんは安定していても、インフルエンザをきっかけに一気に喘息が重症化することがあります。喘息の吸入薬、咳止め、痰を切る薬、抗アレルギー薬など、ふだん使い慣れている薬を最低2日分ほど用意しておくと安心です」
■脳・呼吸に関わる症状は迷わず救急車!
さらに次のような症状が出た場合は「すぐ救急車を」と伊藤さん。
「痙攣が続く、会話が通じない、視線が合わない、名前を呼んでも反応しない、などの意識症状が現れた場合は、重篤な脳の合併症“インフルエンザ脳症”の疑いが強いです。放置すると、脳へのダメージが深刻になります」
インフルエンザ脳症は後遺症が残ることも多く、患者の10~30%が死亡するというデータもある。ほかにも、「呼吸が苦しい、全身が紫色になっている、脈が測れない、血中の酸素飽和度が92%を切っている」などの呼吸症状があるときも迷わず救急車を呼んでほしい。判断に迷う場合は、医師や看護師が24時間・年中無休で対応してくれる“救急ダイヤル”へ相談しよう。
「地域によって番号が異なる場合があるので、事前に確認し、携帯アドレスのトップに登録しておくと安心です」
そして忘れてはいけないのは、“保険証”の確認だ。
「最近では、いざ使おうと思ったらマイナ保険証の有効期限が切れていたというケースが多発しているので、注意が必要です」(前出・「保団連」曽根さん)
マイナンバーカードに付いているICチップ(電子証明書)は、発行から5年目の誕生日が有効期限。マイナンバーカード本体も、発行から10年目の誕生日を過ぎれば失効するため、それぞれ更新手続きが必要になる。しばらく病院にかかっておらず、久しぶりの受診となる場合は要注意だ。一刻を争うつらい症状のなか、万が一、保険証の不備で10割負担を求められたら、泣きっ面に蜂だ。
休診も増える年末年始、急な発熱で救急外来を受診する際に、「保険証が使えない」と慌てることがないよう、あらかじめ手元の保険証の期限や資格確認書の有無を確認しておこう。
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