兵庫県の内部告発文書問題をめぐって、虚偽の内容の発信で名誉を棄損されたとして、奥谷謙一兵庫県議(40)は1月7日、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首(58)と同団体に対し、1100万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。
奥谷氏は提訴後に会見を開き、訴えを起こした背景について、「立花氏は知事選挙等々において、SNS上で主に発信をしていた。簡単に言うと、私が(編注・元県民局長の)犯罪事実を知りながら、それを隠蔽していたとか、隠蔽するためにマスコミに圧力をかけて報道を止めていると主張していました。こういった主張は全くの虚偽、根拠のないデマです。こういったデマによって、私自身の社会的評価、信頼が著しく棄損されたと考えています」と説明した。
なお、同席した石森雄一郎弁護士は、奥谷氏の発言にあった「犯罪事実」について、これ自体が虚偽だという見解を述べている。
また、立花氏が立候補した’24年11月の兵庫県知事選中、奥谷氏の自宅兼事務所前で街頭演説を行った際に「出てこい奥谷」などと発言していたことを受け、奥谷氏は名誉棄損や脅迫などの容疑で立花氏を刑事告訴していた。県警は立花氏を書類送検したものの、神戸地検は’25年12月に嫌疑不十分で不起訴としており、奥谷氏はこれを不服として1月7日付で検察審査会に審査を申し立てている。
奥谷氏は、内部告発文書問題を調査する百条委員会の委員長だった。立花氏は、同委員会のメンバーで、’25年1月に亡くなった竹内英明元県議(享年50)に関するデマを流布したとして、同年11月に名誉棄損の容疑で起訴され、現在も勾留が続いている。
会見で、奥谷氏は今回の訴訟を「私自身の個人の名誉を守るためではない」と説明。立花氏の言説が多くの人々の判断材料になった可能性に言及し、以下のように訴えた。
「虚偽情報によって民意が歪められることは民主主義の根幹を揺るがす問題であり、私は到底容認できないことが最大の理由です。言論の自由は民主主義の土台であり、最大限尊重されるべきですが、その自由は責任を伴うものであり、事実に基づくものでなければいけません。虚偽の言説によって他者を貶め、社会の公正な判断を歪める行為を、私は断じて許すことはできません」
その上で、記者から斎藤元彦知事(48)が再選したという選挙結果に民意が反映されたと考えるかを問われ、奥谷氏は「完全に個人の考え」と前置きした上で、こう返した。
「前の知事選は史上最悪の選挙だったという風に思っています。デマと誹謗中傷で大きく民意が歪められた選挙であって、私はあの選挙に正当性を感じないし、許せないというのが本音です」
先の知事選を“史上最悪”とまで言い切った奥谷氏。選挙後、本誌は奥谷氏に取材する機会が何度かあったが、先述した立花氏の街頭演説をめぐって、奥谷氏は心労を重ねていた――。
「出てこい奥谷!」
「まぁあまり脅しても、奥谷さんが自死されても困りますので、これぐらいにしときますけど」
これは、知事選真っただ中の’24年11月3日に演説に駆けつけた聴衆の前で立花氏が口にした言葉だ。当時、立花氏はスピーカーを用いて演説を行い、奥谷氏の自宅兼事務所のインターホンも鳴らしていたが、この演説の余波について、奥谷氏は取材にこう話していた。
「母には避難してもらってたんですけど、やっぱり帰ってきた時にはちょっと怖かったんだろうと思いますけど、涙を流すようなこともあったので。私としてこう、家族にこれだけ迷惑をかけているというのは大変辛かったですし、同時にすごい怖い思いをしたということでありますので、これは大変遺憾です」
「県庁の方にも色々と電話がかかってきていたようで、『奥谷の家の前におったけど、おれへんかったやないか』『奥谷の家の前におるけど、どこおんねん』といった内容もあったと聞いています」
選挙後1カ月が経過したころ、SNSでは奥谷氏が“痩せて見える”といった心配の声が噴出し、奥谷氏は本紙の取材に対して気丈に振舞ってはいたものの、「気持ち的にしんどく、顔に出てしまったのかなと思う」「熟睡できないと感じることがる」とコメント。誹謗中傷の声も、やまなかったという。
「電話は、事務所や議会の方にもきています。“百条委員会に対する議会の進め方に不満がある”といった声もあり、それはそれでいいかと思いますが、『クズ』『辞めろ』など誹謗中傷にあたるものもありますね。件数は1日あたり10件弱ぐらいですが、週でカウントするともっとあると思います」(奥谷氏)
こうした奥谷氏に対する“攻撃”を助長した要因の一つとして考えられているのが、立花氏が自身の当選を目指さず、斎藤知事再選のために各地で展開した「二馬力選挙」だった。奥谷氏の自宅兼事務所前での演説もその選挙中に行なわれたものだが、斎藤氏はこれまでの会見で二馬力選挙に関する具体的なコメントを避け続けている。
奥谷氏は今回の会見で、二馬力選挙についてこう述べていた。
「二馬力選挙がありましたが、そういったところの真相を私は知りたいですし、そこが明らかになれば、議会としてもしっかり対応していくべきだと考えます。繰り返しますが、これは個人の考えなので」
1月7日に行われた今年最初の兵庫県知事の定例会見では、二馬力選挙に関する質問は出ず、真相解明は次回以降に持ち越しとなったが、今後斎藤氏が問題に関して口を開くことはあるのだろうか。
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