「通常国会召集を前に、高市早苗首相(64)は“伝家の宝刀”を抜くことを決断。衆議院を解散し、総選挙に突入する意思を固めました。2月8日の投開票が有力視されています」(全国紙記者)
1月15日には、立憲民主党と公明党がタッグを組んだ新党・中道改革連合が立ち上がったが、高市首相は、70%超の政権支持率を追い風に、衆議院で自民党の単独過半数獲得を狙っている。急転直下の展開について、元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんはこう語る。
「昨年12月の会見で、高市首相は物価高対策が最優先で『解散など考えている暇がない』と語っていました。それから1カ月もたたないうちに解散・総選挙を決断したことは理解に苦しみます。総選挙が行われることで、税制改正や高校無償化、地方自治体向けの交付金をはじめ、通常国会で予定されていた物価高対策にもつながる予算審議がストップ。3月末までに予算を通すことは不可能となり、物価高対策の実施も大きく後ろにずれ込んでしまいます。
物価高騰に苦しんでいる国民よりも、自民党の利益と政権基盤強化を優先させた形です」
高市首相の思惑どおりに選挙で自民党が圧勝した場合、私たちの生活にはどんな影響がおよぶことになるのだろうか――。
国際経済学者で同志社大学名誉教授の浜矩子さんが語る。
「仮に総選挙で自民党が議席を伸ばせば、高市首相は国民の負託に応えると、強くて大きくて稼げる経済を構築するために“責任ある積極財政”を大胆に展開するでしょう。
特に強い国家を作るためにと、AIや造船、防衛産業などの戦略産業の分野に多額の投資がなされると考えられます。それを見込んで、解散風が吹いて以降、株価は急騰しました。
しかし、お金をバラまく財政拡張政策はインフレを加速させます。高市首相はそれを経済が活況している“証し”としか考えていないようですが、さらなる物価上昇は家計にとって大きなダメージに」
インフレを上回る持続的な賃上げが実現できれば、話は変わってくるが、
「高市首相は『賃上げは事業者に丸投げしない』と、昨年10月の所信表明演説で明言していましたが、どうやらその話はすっかり立ち消えしたもよう。格差是正の施策もないまま、持たざる者はこれまで以上に虐げられていくことが懸念されます」(浜さん)
物価高の加速だけではない。老後生活の虎の子である年金にも大きな影響が生じかねないと、浜さんがこう続ける。
「高市首相がやろうとしているサナエノミクスは、財政拡張を推し進めたアベノミクスの過激版焼き直し。財政の悪化が限界に達している今、日本国債を増発することは、国債の暴落を招きかねない。
国債は日本国民や国内の金融機関だけが保有していて、経済が混乱するような投げ売りはしないと考えている人が少なくありません。
しかし実際は、価格が下がっている日本の長期国債を、海外の機関投資家が買い集めています。国債の価格が下落すれば、彼らはすぐに売りに転じるでしょう」
国債の価格が年金と関係してくるのは、大量の国債を保有する機関の一つが、年金積立金の運用をしているGPIFであるためだ。
「国債暴落を放置していると利益が毀損されるとなれば、GPIFや企業年金基金なども売りに転じます。それは年金の原資が大きく減少することを意味します。ただでさえ物価高で実質的な目減りが続く年金の支払いが先送りされるなど、混乱を招く事態が起こることも否定できません」(浜さん)
また、選挙結果によって高市政権が盤石になることで、“軍拡の道”へ突き進む可能性があると、前出の古賀さんは指摘する。
「すでに、防衛費の財源にするために所得税増税の方針がとられ、予算が余ったときには防衛費に優先配分するなど財政政策としても軍事化が着々と進んでいます。
自民党が過半数を取れば、インフレになって増えた政府の税収を軍拡に充てるなど、財政が完全に軍事優先になっていくことが想定されるのです。
しかも、防衛や国防という言葉を使わず、経済安全保障、サプライチェーンの強靱化といった名の下に、軍拡に向けた動きが加速することも十分考えられます」
高市首相の「台湾有事」に絡めた国会答弁を機にギクシャクしている中国との関係においても、さらなる混乱が起こるという。
「高市首相はけっして口にしませんが、今回の選挙の大きな争点は中国に対する姿勢。仮に選挙で自民党が圧勝すると、高市政権は中国に対し、これまで以上に強硬な姿勢をとることが予想できます。
1月6日、中国は軍民両用の品目の日本向けの輸出規制の強化を発表しましたが、選挙に勝った高市首相が中国に対する姿勢を強めることで、中国側も輸出規制の運用をいっそう厳格化するでしょう」(古賀さん)
ハイテク産業に欠かせないレアアースの禁輸措置を懸念する声が上がっているが、生活への影響が深刻なのはそれだけではない。古賀さんが続ける。
「たとえば火薬の主原料であるリン化合物は、農業で肥料の原料としても用いられています。中国の輸出規制が強化され、軍事利用の可能性があるからと、リンが中国から入ってこなくなる可能性もある。これによって農業は大きなダメージを受けます。
ほかに、中国からの輸入に依存しているものに薬の原材料があります。これも自衛隊が薬を使うことを理由に輸入が停止する恐れも。市販薬や医療用医薬品が製造できない事態も起こりうるのです」
仮に中国が抗生物質の原料を輸出停止にしたら……。生命の危機に直結してしまう。
深刻な事態が立て続けに起こることの引き金になりかねない真冬の解散総選挙。政局にばかり目を向けていないで、私たちの生活の是正にもきちんと目配りをしてもらいたいものだが――。
画像ページ >【写真あり】生活者ファーストを前面に打ち出す新党「中道改革連合」(他2枚)
