■SNS社会はルッキズムの影響を受けやすい社会
近年、加工アプリや動画投稿などのSNSが身近になったことで、ルッキズムの形もより複雑になってきたと、前川さんは指摘する。
「ネット上に顔や体型を公開することが一般的になり、多くの人の目に触れ、他者と比較される機会が増えたことで、ルッキズムの影響を受けやすくなっています。また、人気の加工アプリは、理想的な容姿を簡単に作り出せるため、本来の自分とのギャップに悩むなど、容姿へのプレッシャーを強める要因の一つになっています。
一方で、ダイエットや整形、メイクなどで実際に自分を変えなくても、気軽に理想の姿を表現できるため、極端な自己改造に走らずにすむというメリットもあります」
20年以上、容姿について悩み、周りの目を過度に意識してきた前川さん。ルッキズム払拭の発信をするようになってからも、その影響の根深さを感じ続けている。
こうした思いを共有するライターのウィルソン麻菜さんと意気投合したことで、ルッキズムについての書籍を出版することになった。真っ先に行ったのは、本を読んでほしい若者への聞き取り調査だった。
「現役の女子高校生に取材を重ねると、かつての自分のように、自分自身に呪いをかけている人がいかに多いかがわかります。摂食障害や学校に行けなくなった人も。また、親の立場から、『子供たちには自分の容姿で悩んでほしくない』と葛藤する人もいました。社会の仕組みとして繰り返し外見が評価されることで、自分自身に呪いをかけ苦しんでいるんです」
書籍が出版されると、問い合わせが相次いだ。新聞各社および各ウェブメディア、ラジオ番組、YouTubeチャンネルなど20媒体以上から取材申し込みが殺到したという。
「この本が、ルッキズムについて考えるきっかけになってくれたら」
【後編】学生1000人以上を調査 “令和のルッキズム”解説書の著者語る「子供が整形したいと言い出したら」へ続く
【PROFILE】
前川裕奈<まえかわゆうな>
1989年生まれ。慶應義塾大学法学部、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科を卒業。三井不動産、JICA、在スリランカ日本大使館での勤務を経て、2019年に「kelluna.」をスリランカで起業。現在は、現地と行き来しながらkelluna.を運営し、講演活動も行っている。好きなことは、ランニング、マンガ、推し声優のイベント参加。著書に『そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話』(イカロス出版)。
ウィルソン麻菜<まな>
1990年生まれ。ライター。属性や肩書などの枠を超えた人々の物語を伝えることで、平和な世界を目指す。インタビューや対談記事の企画・執筆、サイトテキストなどのライティングを行う傍ら、言葉の伴走サービス「ことバディ」、個人向けインタビューサービス「このひより」を運営。人々が自分らしく、ともに生きるために「言葉にすること」の可能性に向き合い続けている。アメリカ人の夫とともに二児の英語の子育てに日々奮闘中。
『つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~』(講談社)

