■3,132万円、いまだ1円も支払われず
Aさんは毎日10数人の職人を現場に入れ、約3週間で工事を完成させた。しかし、その間に3次下請けの担当者は次第に電話に出なくなったという。
「『来週の月曜日まで待ってください』と言われたら、立場の弱い僕たちは待ちます。でも月曜日になっても連絡がない。すると今度は『週末までには』と言われる。その繰り返しでした」
途中で工事を止めることも考えた。しかし、すでに高額な機材を購入し、多くの職人を現場に入れている。何より、「自分たちが工事を止めたら、万博の開幕に間に合わない」という思いがあった。
「万博なんだから、どこかが、誰かが何とかしてくれるだろうという思いがありました。利益が出ないことはあっても、まさか1円ももらえないとは思わなかった」
工事から約1年半が過ぎても、3,132万円は1円も支払われていない。Aさんは協力会社に自社資金から約450万円を支払ったが、残る約2,300万円はいまも待ってもらっている。
「うちは設立してまだ6年ほどの会社です。手元に現金はほとんどありません。それでも協力会社の社長が『2000万円の車を1台買って壊したと思うしかない。あとは働くしかないやん』と言って待ってくれている。だから僕は何とか生きています」
未払いは私生活にも影を落とし、Aさんはその後、離婚したという。
「もちろん原因はこれだけではありません。でも、このお金の問題が最後の一押しになったことは間違いありません」
Aさんは、契約書を交わさずに工事を始めたことについて、自らにも反省すべき点はあるという。それでも、こう訴える。
「何の依頼もなく、僕たちが勝手にセルビア館へ行って工事をすることなどあり得ません。僕たちが工事を完成させたから、セルビア館は開幕に間に合ったんです。その成果を受け取った万博協会や大阪府が、『民民の問題です』と言って終わらせていいのでしょうか」
