■「減らせ」という要求は異例。利益誘導政治の根深さ
前川氏自身、政治家の働きかけによって行政判断が変わった経験がある。文科省の初等中等教育局財務課長だったころ、ある県の教育委員会が地元の有力国会議員に依頼し、教員定数の加配を増やすよう求めてきたという。
「内々に決めていた数字の2倍ぐらい欲しいと言ってきた。私は公平性を守るため、要望には応じず、結果だけをその政治家に少し早く伝えればいいと考えました」
ところが上司の局長は「あの先生の言うことは聞いておいた方がいい」と判断。結果的に加配は増やされたという。
「官僚組織は、上に行くほど政治的な介入に弱くなる傾向があるんです」
予算を増やすよう求める政治家は珍しくない。しかし、簗氏が減らすように要求していたとしたら、それは異例のことだという。
「特に選挙の結果に対する報復みたいな例は、聞いたことがありません。陰湿ですよね。『俺の力を見せつける』ということでしょう」
憲法15条は公務員を「全体の奉仕者」と定めている。前川氏は、特定の自治体への交付金を増減させる政治的な働きかけは、行政の公平性を損ない、憲法の趣旨に反すると指摘する。
仮に、予算削減の働きかけが簗氏による「誇張」だったとしても、そのような行為を自らの“功績”と考え、アピールするという行為自体が許されないものだ。なぜ高市早苗首相(65)は簗氏を罷免しないのか。
「このくらいのことは政治家には許されると思っているんじゃないですかね。口利きや利益誘導は政治家の仕事だと思っているのかもしれない。不祥事としての重要度の認識が低いんじゃないでしょうか」
前川氏は、問題の根底には自民党政治に根付いてきた利益誘導の構造があるとみる。
「これは単なる不祥事じゃない。自民党政治の本質ですよ。自分を支持する者にはお金を取ってくる。支持しないんだったらお金を取ってこない。国民の税金の配分権を、自分たちの選挙に有利になるよう使ってきたわけです」
さらに、有権者の意識にも問題があると指摘する。
「自分たちの地域にどれだけ利益を持ってきてくれるか、そればかりで政治家を選んでいると、自分たちの国をどうするかという発想にならない。日本には、まだ民主主義が根付いていないんだと思います」
道路予算を「大幅にカットした」と語った簗氏。その発言と実際の予算配分には、どのような関係があったのか。
国交省は政治的な圧力を否定しているが、問い合わせの詳しい内容や減額の具体的な根拠は、いまだ明らかになっていない。
画像ページ >【写真あり】マスコミに囲まれて頭を下げる簗大臣(他2枚)
