■「予算が決まってから意見を聞く」パブコメの矛盾
市川氏が最も問題視するのは、意見を募集する時期だ。
「高額療養費の自己負担上限額をいくら引き上げるかは、前年末の大臣折衝などを経て決まり、その後、国会で予算が審議されます。
ところが、パブコメが行われるのは、その後なんです。
すでに予算まで決まった段階で『負担が重すぎる』『引き上げをやめてほしい』という意見が届いても、政策を変更するには、決まった予算にも手を入れなければならない。現実的には非常に難しいんですね」
つまり、国民に意見を求めるころには、政策の大枠がすでに決まっているというのだ。
「今のパブコメは、企業の『お客様お問い合わせフォーム』に近いと思うんです。商品について意見を送っても、作り直すかどうかは企業側の判断。次の商品開発の参考にする、ということに近い。
でも、国民は、たくさん意見を出せば政策に反映されると期待しています。そこに大きな認識のずれがあるんです」
■ 石破氏は見送ったのに…なぜもっと早く国民の声を聞かなかったのか
市川氏は、石破前首相が2025年3月に引き上げを見送った判断を評価する。
「普通だったら、あそこまで進んだ段階ではなかなか引き下がれない。よくあのタイミングで引き下がったな、と思います」
だからこそ、その後の見直しでは、もっと広く国民の意見を聞くべきだったという。
「厚労省も患者団体などから丁寧に話を聞いたと思います。ただ、誰から話を聞くかを決めているのは、あくまでも厚労省です。行政側が選んだ人だけではなく、もっと広く意見を募るべきだったのではないでしょうか」
市川氏が参考例として挙げるのが、イギリスの「グリーンペーパー」だ。
「イギリスには、政策の具体的な内容を決める前に案を公開し、広く意見を聞く仕組みがあります。
日本でも、今回のように一度見直しが見送られるほど大きな議論になった政策なら、予算や制度の大枠を決める前に、広く国民から意見を募ることができたはずです。
すべての意見を反映することはできなくても、『この部分は政策に反映しました』と示すことができれば、国民の納得感も違ってくると思います」
国民の声を聞くための制度なのに、その声が届くころには、政策は事実上決まっている。約5300件もの意見が寄せられた今回の高額療養費引き上げの問題は、パブコメが形だけの手続きになっていないか、問いかけている。
画像ページ >【写真あり】10月16日の参議院予算委員会で、パネルも使ってこの問題を追及した山内議員(他1枚)
