「あれからもう1年も経つんですね。本当に、あっという間ですね。私も、あっという間に100歳になっちゃった。100年の間いろいろなことがあって、もちろん辛いこともありました。でも、とても辛いことだって時が癒してくれたこともありました。そして今、思い返すと、やっぱり私は幸せでした。そして人生、楽しかったですね」
そう振り返るのは、92歳から詩を書き始め、第1詩集『くじけないで』と第2詩集『百歳』が累計200万部を超えるベストセラーとなった”100歳の詩人”こと柴田トヨさん。いつも朗らかなトヨさんだが、東日本大震災の話になると表情は曇る。
「テレビで被災者の方たちのようすを見ると、本当に辛い気持ちでした。震災に遭われた方々はお気の毒で、なんていってなぐさめればいいのかわからないけど……。少しでも皆さんが元気になってくれるよう、いつも空や風に向って手を合わせてお祈りをしています」
今回、被災地への復興の思いを込め、トヨさんが3編の詩を選んでくれた。
●『くじけないで』
ねえ 不幸だなんて
溜息をつかないで
陽射しやそよ風は
えこひいきしない
夢は
平等にみられるのよ
私 辛いことが
あったけれど
生きていてよかった
あなたもくじけずに
●『朝はくる』
一人で生きていく
と 決めた時から
強い女性になったの
でも 大勢の人が
手をさしのべてくれた
素直に甘えることも
勇気だと わかったわ
(私は不幸せ……)
溜息をついている貴方
朝はかならず
やってくる
朝陽も
射してくる筈よ
●『教わる』
母に縫い物を教わりました
連れあいには辛抱を
教わりました
倅は詩を書くことを
教えてくれました
みんな 私には
役立ちました
そして今
人生の終わりに
人間のやさしさを
震災で教わったのです
生きていて よかった