厚生労働省の調査のよれば、65歳以上のお年寄りのなかで単身世帯が占める割合は約24.2%。夫婦のみの世帯を合わせると50%を超える。高齢者にとって、『孤立』はもはや特別なものではない。そこで活用したいのが、ネットを通じた人とのコミュニケーションだ。

横浜市にある会議室で、20人ほどのお年寄りを前に説明しているのは、なんと同世代のおばあちゃん。『マーチャン』こと若宮正子さん(76)。彼女はパソコンを使って絵はがきをデザインしたり、動画投稿サイトに画像をアップしたりはお手のもの。自宅では週2回、パソコン教室を開いている。

彼女はこの日、自身が副会長を務めるネット団体『メロウ倶楽部』神奈川支部の勉強会で講師を務めていた。このクラブは50代以上の会員が会員同士の交流や社会参加を支援する組織だ。東京や千葉などにも支部を持ち、昨年時点で会員数は400人。ふだんからネット交流が盛んに行われ、これがライフラインにもなっているという。

「昨年の春。頻繁に書き込みを行っていた、北関東に暮らす男性が『ああああ』とだけ投稿をしてきました。とてもアクティブな方だったので、最初は”おかしいな”と思う程度だったんですが、それが繰り返されるようになって。『冗談はやめてよ』という私の書き込みにも返事は『ああああ』でした」

と振り返るマーチャン。異変に仲間のひとりがこれはただ事ではないと察知し、男性のところへ電話を入れると、相手は電話口に出るものの会話にならない。『ああああ』は、彼の必死のSOSだったのだ。

「急いで救急車を要請し、15分くらいして『病院に収容しました』という連絡を受けて、ほっとしました。男性はすでに退院し、現在は老人ホームに入居してリハビリを行っています。一命は取り留めたものの失語症が残りました。でも、男性からは『ごぶさた』の四文字の書き込みがあったんです。漢字はまだ書けないけど、奇跡の生還ですよ」

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