「人の命に関わることなのですから、国や政府にはしっかり対応してもらわないとみんなやりきれないと思います。我々はしびれをきらしているんですよ!」

満員の会議室に悲痛な叫びが響いた。原発問題でいまなお全村避難が余儀なくされている、福島県飯舘村で4月12日、『避難区域見直しに関する懇談会』が開かれた。村長、村議会議長をはじめ、この日は政府を代表して内閣府原子力災害現地対策本部と、環境庁、経済産業省の職人が説明にあたった。

帰宅を願う村民の希望を断ちきるかのような、避難区域の再編が政府から発表されたのが3月30日のこと。年間50ミリシーベルトを超える『帰還困難地域』、25〜50ミリシーベルトの『居住制限区域』、20ミリシーベルト以下の『避難指示解除準備区域』の3つに区分するというもので、帰還困難区域は立ち入り禁止にするために鉄制のバリケードで封鎖するという計画だった。

懇談会の後、バリケード封鎖となる予定区域に位置する長泥地区の自治会長・佐藤朋康さんが本誌の取材に応えてくれた。

「いちばん前で説明を聞いていたけど、やっぱり役人たちは無責任だと思いました。正確な情報開示をしてくれなかった震災直後のまま。まったく反省の色がみられない。今回だって、私たちの意見を聞いて、納得いくまで話に応じてくれればいいけど、今回の説明じゃ、とてもそうはいかないですよね」

再編後には、バリケードの中にある自宅へ容易に帰れなくなることに、佐藤さんは悔しさを隠せない。新しい避難区域に住居がある住民には、国から月額10万円を目安に賠償金が支払われる。佐藤さんが住んでいた帰還困難区域の住民は、5年分の600万円を一括で受け取ることができる。しかし、佐藤さんはこうつぶやいた。

「政府は賠償金の600万円で大切な家や田畑を捨てろというのか……。賠償金なんていらないから、戻れるものなら、やっぱり自宅に戻りたいね」

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