「大飯原発がフル稼働となりましたが、東電は昨年の事故の重大さを忘れてしまったのでしょうか。いまだ福島の被災者はロクな補償も除染もなされず、置き去りにされようとしています。私は、大飯原発がフル稼働した7月9日、福島市と郡山市にある2カ所の保育園を訪問しました」

と語るのは、経済ジャーナリストの萩原博子さん。震災前に戻すべく、原発再稼働は急ピッチで進む。しかし福島の実態は震災後から変わっていない。逆に子どもたちへのしわ寄せはひどくなるばかりだという。今回、荻原さんが訪れたのは、どちらの園も原発から約60キロ離れている。しかし、市内の至るところにホットスポットが点在しているのだ。

最初に訪れたのは、郡山のつくしんぼ保育園。少し前まで外へ出ると、放射線量は毎時1.5マイクロシーベルトくらいのところもあり、東京と比べると数十倍の放射線量だ。

「園長の鹿又智子先生は、子供の運動脳力低下の現状について『子供たちを久しぶりに公園に連れていったところ、震災の前には上れていた子が、ジャングルジムにもすべり台も上れなくなっていたのです。子供の機能が発達する大切な1年間、ほとんど外に出られない状態が続いたことが影響したのでしょう』と話していました。『除染をして子供たちがのびのび遊べるようにしてほしい』とも訴えています。外の遊びは乳幼児は1日15分。子供たちは日光浴はおろか、土を踏みしめることもままならないのです」(荻原さん)

一方、福島市の渡利地区にあるさくら保育園も厳しい現実と闘っている。この地区も線量の高さが問題となっており、自然に囲まれた保育園のお散歩コースだった花見山公園はかなりの高さ。昨年までは立ち入ることさえできなかった。

さくら保育園はこの花見山の登り口に位置し、定員90人のところ現在は0歳から就学前までの79人が在籍しているという。荻原さんは、子どもたちの現状についてこう続ける。

「あるお母さんは『子供たちは外に出たい、とか、遊びに生きたいと言わないんです。幼いながらに親が苦しんでいることを感じているのでしょう』と教えてくれました。園庭に出るときに踏むマットに大量の放射性物質が付着していたので、東電に言ったら『請求書を送ってこい』と高圧的な対応でした。請求書を送ったのですが、100万円の除染費用はいまだ支払われていません。それなのに国も東電も原発の再稼働に前のめりなのですから、未来を担う子供の命と安全を何と思っているのでしょう」

関連カテゴリー: