「7月に元気くんが実家に帰ってきたのですが、お母さんが朝起きるといなくなっていたそうです。しばらくするとTシャツ、短パン、サンダル姿で帰ってきて『小学校と中学校に挨拶してきた』と言ったそうです。お母さんは『先生に会うならもうちょっとちゃんとした格好で行きなさい!』と苦笑していましたね」

そう語るのは、陸上男子やり投げの期待新星・ディーン元気(20)を幼少期から知る山下陽子さん。地元・兵庫県神戸市西区の住民有志でつくられる『春日台ふれあいまちづくり協議会』の委員長を務める山下さんは「彼は昔から名前そのままの“元気”な男の子だった」と回想する。

「いつも裏山を泥んこになって走り回ってる男の子でした。虫やハ虫類を獲ってくるのが大好きでね。虫カゴいっぱいにトカゲを詰め込んで帰って来たこともありました。お母さんが彼のズボンを洗濯しようとしたら、ポケットから生きた蛇が飛び出てきたこともあったそうです(笑)」

3つ上の兄が陸上で砲丸投げをしていたのに憧れて、陸上を始めた元気。そのパワーは一気に開花する。市立尼崎高校時代の彼について、陸上部顧問だった大久保良正さんはこう振り返る。

「彼は中学までは砲丸投げと円盤投げの選手でした。1年の冬、彼が人生初のやり投げに挑戦する機会があったのですが、何の練習もしなかったのにいきなり55メートル飛んだんです。当時の県大会優勝ラインでしたから、もうビックリしました!」

その日から猛特訓が始まった。納得いくまで練習をやめず夜10時をすぎることあり、先生が車で家まで送ることもしばしばだった。そんな努力の日々が、彼を五輪出場へと導いたのだ。

「お母さんは『元気は大舞台でも舞い上がることがない。逆に大きな大会になればなるほど燃える性格なのよ』と言っていました」(山下さん)

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