4月5日の『ル テアトル銀座』から、原作・江戸川乱歩、脚本・三島由紀夫、演出・美術・衣装・主演・美輪明宏による伝説の名舞台『黒蜥蜴』が5年ぶりに再演される。女盗賊・黒蜥蜴を追う名探偵・明智小五郎が丁々発止と散らす恋の火花と”究極の対決”。この名舞台誕生のいきさつを美輪さんが語ってくれた。
『黒蜥蜴』の初上演は’68年4月のこと。だか、そのきっかけはさらに20年近くさかのぼるという。昨年亡くなられた中村勘三郎さんの父、十七代目勘三郎さんが、『シャンソンを歌う音楽学校出身の美少年がいる』との情報を聞きつけ、美輪さんがバイトしていたお店に現れたそうだ。
「’51年、私が16歳のときでした。当時、私はそのお店で『枯葉』などをフランス語で歌っていました。勘三郎さんから”フランス語でシャンソンを歌う16歳なんて初めて会った。キミみたいな人間を好きな人がいる”と言って、後日、連れて来られた方が、江戸川乱歩さんでした」
最初に会ったとき、明智小五郎が大好きだった美輪さんは「どんな人?」と聞いてみた。すると自分の腕を指さし「ここを切ったら青い血が流れるような人だよ」と乱歩。”うわ〜、ロマンチックじゃない”と言うと「お〜、君そんなことがわかるのかい。じゃあ、君の腕を切ったらどんな色が出るんだい?」と聞いてきた乱歩に「七色の血が出ますよ」と美輪さんは答えた。
「『面白い。じゃあ、切ってみようか。おい、包丁持ってこい!』とカウンターの店員さんに包丁を持ってこさせたのよ(笑)。私はこの爺さん、本当に切りかねないなと思ったから”およしなさいまし。ここを切ったら七色の虹が出て、あなたの目がつぶれますよ”っていったら、『君いくつだ?』と。”16です”と答えると『16でこのセリフかい。生意気だけど面白い』って(笑)」
それ以来、江戸川乱歩は美輪さんのことをかわいがるようになったという。