「この人、とんでもなく面白い!」と、あのマツコ・デラックスがテレビの中で笑い転げたおじさんがいる。中野区に住む元棋士の桐谷広人さん(63歳・独身)だ。彼は株主優待だけで衣食住の生活すべてを賄っている。保有している株のなかで、株主優待を出しているおよそ400社の企業から優待券や優待品をどっさり受け取っているのだ。財布には現金は1円も入っておらず、優待券がごっそり。

「大手ラーメン店や牛丼店、回転ずしや居酒屋、映画館や洋服店などの優待券です。ほとんどの業種の優待券を持ち歩いていますので、現金は必要ありません」(桐谷さん・以下同)

 移動するときもお金がかかる電車は使わず、すべて自転車移動。その自転車も優待券で手に入れた。それに加え、自宅には毎日のように、米、ジュース類、栄養補助食品、即席ラーメン、冷凍食品、やかんやフライパンなどの家庭用品といった優待品が届く。桐谷さんはプロ棋士をしていた29歳のころ、株を始めた。

「そのころ、恋人にふられて、失意のどん底でした。失恋した寂しさを癒すつもりで手を出した株が面白いように儲かって、株式投資の評価額が3億円まで増えました。当時はバブル期でしたからね。それでのめり込んでしまったんです」

 しかし、すぐにバブルは崩壊。その後、リーマン・ショックなどがあり、桐谷さんの持ち株は一時5千万円まで目減りした。このとき、思い切って株売買の方向転換をする。

「配当金は当てになりませんので、株主優待に目をつけたんです。それまでは1点集中で多額の株を買っていましたが、その後はたくさんの企業の株を安価で買うようにしました。5万から10万円程度の株でも、株主優待はつきますから」

 桐谷さんはどこの企業がどんな優待をしているかを入念にチェック、「よさそうなのを買うようにしています」とほほ笑む。現在、およそ600社の株を保有し、その株式投資の評価額はおよそ1億数千万円だ。なに不自由のない株主優待生活のように見えるが、一つの悩みがある。「優待券には期限付きが多く、期限を過ぎればただの紙切れになってしまう」ことだ。

 そのため、桐谷さんは優待券を使い切るのにとても忙しい日々を強いられている。たとえば、台場にある焼き肉チェーンの優待券が今日までの期限であれば、桐谷さんは自宅がある中野から台場まで、およそ1時間をかけて自転車をひたすら漕ぎまくる。そのあと、これまた今日までの映画観賞券が日比谷だったりしたら1時間をかけて自転車移動することも。

 毎日毎日、期限切れ寸前の優待券を消費するために、桐谷さんは追いかけられるように、自転車をぶっ飛ばす。

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