8月22日、32歳の誕生日に写真集『斎藤工 蜷川実花』が発売される。この年で、出演映画はすでに48本。当代一の“リアルな色気”で大人女子を骨抜きにする斎藤工が、幼少期を語ってくれた。
映画の仕事をしていた父の影響で、幼い頃から映画館に行くのが日常だったという斎藤は、教育者・哲学者として著名なシュタイナー氏の教えを実践する芸術学校の日本校第2期生だった。小学校の同級生はわずか7人。
「小学校でシュタイナー教育を受けるのは、親の意思。だから教育に熱心な親ばかりでした。父親がいるのがウチだけだったり、芸術家の人が多かったり、変わった学校でした。当時は、嫌で嫌でしょうがなかった」
シュタイナー教育では、幼少期の衣食住が人格にもたらす影響を重視するため、衣服の素材や自宅のインテリアまで指導する。食事は菜食玄米のマクロビオティックを、学校のみならず家庭でも徹底している。
「家にテレビはないし、やたらと美術館やコンサートに連れて行かれるし。ただ、地元のサッカークラブに入っていたので、公立の子との接点はあったんです。そこで垣間見た漫画とかゲームの文化が、喉から手が出るくらいに欲しかったんですね。僕のおやつは玄米パンなのに、みんなが食べているのはスナック菓子。初めてカップラーメンを食べたときは感動しましたよ、あまりにもおいしくて!」
6年生の終わり、サッカーの強い公立中学に進学するため、地元の公立小学校に転校した。いわゆる「普通の学校」での生活は、カルチャーショックの連続。
「6年生ともなると、スクールカーストじゃないですけど、学校のなかでの自分の立ち位置を残酷なくらい理解しているんですよね。みんな“己れ”がスパークしているように見えました。芸術教育なんて受けていないのに、僕らよりシュタイナー的な子もいるし。『リア王』を何度も何度も繰り返し読んでいる女の子とか(笑)。それまでの学校は人数が猛烈に少ないので、無人島方式で“女子”を好きになっていたのに、公立には圧倒的にかわいい“ヒロイン”がいて、直視できないくらいでした。男子の人気者は、本当にカッコいいし。自分には何があるのか、必死に考え続けていましたね」
俳優業を始めたころ、個の魅力溢れる周囲に圧倒され、必死に己れの個性を探した。そしてたどりついた“ほかの人と違うこと”が、幼いころに受けた「シュタイナー教育」だったという。
「あの教育を受けられたこと、今では本当に感謝しています。僕には個性も才能もないし、この仕事に向いてない。その自覚が僕の原動力ですね」