「希望を持てるような本が好きですね。自分で買って、自分で活字を追う。そうすると、心が豊かに、強くなる気がするんです。幼いころから、本を読むように、と親から言われてきたこともあって」
そう話す氷川きよしは、今も、時間が許す限り本を読む。言葉の持つ力を信じる。
「不安になることもあります。ちゃんと歌えるか、拍手がもらえるか――日々、宿題がいっぱいある。そんなとき、本や歌の言葉にいつも救われるんです。『前進をしない人は、後退しているのだ』とかね。ゲーテの言葉です」
すらすらと、なめらかに口からこぼれる言葉たち。
「『友達がたくさんいるということは、友達が全然いないことである』。これは、アリストテレス。僕も、ひとりの人ときちんと向き合うことや、直接会って、顔を見て話すことを大切にしたいと思っていて。どれだけ深く、どれだけ長く付き合えるか、って大事ですよね。あとは――『心が痛い日も クヨクヨしちゃダメと 月が 月が 月が笑ってる』」
それは、何の言葉?
「20日に発売するアルバムの中の『月が笑ってる』という曲の詞です(笑)」
読書の秋、芸術の秋でもあるが、食欲の秋でもある。最後に、最近食べておいしかったものは?と問いかけてみた。すると、「それはーー歌です!」という、素敵な言葉が返ってきた。