’53年、NHKと日本テレビが開局。テレビ時代が幕を上げた。今年はちょうどそれから55年の節目の年。これまで民放ドラマは数々の忘れられない作品をお茶の間に届けてきた。
ホームドラマの時代を代表する名作『ありがとう』(TBS)。’70〜’75年までシリーズ4作が作られたが、第1〜3シリーズまで、山岡久乃と母娘を演じたのが水前寺清子(68)。第2シリーズで看護師役の彼女が恋人役の石坂浩二と結婚する場面(’72年12月21日放送)は56.3%を記録。これはいまも民放ドラマ最高視聴率を誇っている。
当時、水前寺は『三百六十五歩のマーチ』など大ヒットを連発。歌手の仕事だけでスケジュールは満杯。そこで、月に何日かの彼女のオフ日をこのドラマに充て収録したそうだ。
「月2日で4話分撮ることもありました。そうなると同じセットの分はいっぺんに4話分、つなぎ合わせて1本にする。だからよく見ると1話の中で髪が短くなったり、長くなったりしてますよ」(水前寺・以下同)
そんな彼女の忘れられない思い出は、第1シリーズの最初の回。
「帰りが遅くなったとかで、山岡さんにぶたれるシーンがあったんですよ。私、親にもぶたれたことがなくて、イヤだと言ったら、お芝居だから演技だからって。ところが本番で、山岡さんがリハより早いタイミングで不意打ちのようにバチンってぶってきて。カットの後、大泣きしました。それ以来、山岡さんが怖くて怖くて(笑)」
その緊張感があの丁々発止の名母娘コンビを生んだのだという。
「毎回、山岡さんと『ばか』とか言い合って仲直りするんですけど、家庭の温かさを肌で感じるドラマでした。親子げんかのシーンを見て、うちと同じだとか、うちもあんなふうに言い合えたらいいなとか、みなさん、いろんな思いで見ていた。それがあの高視聴率を生んだのではないかなと思いますね」
今年、水前寺はデビュー50周年を迎えた。
「いまも主題歌の『ありがとうの歌』は必ずコンサートで歌います。43年たったいまだからこそ、すごいドラマに出たんだなと実感してますよ」