本誌連載「中山秀征の語り合いたい人」第4回の対談相手は、人生論『野心のすすめ』が大ヒット中の作家、林真理子さんです。その対談ダイジェストのパート1(~3)は「子育てについて」です。
中山秀征(以下・N)林さんとは、林さんのお嬢さんとウチの長男が、同じ学校の同級生つながりというご縁があるんですよね。今、お嬢さんは中3でいらっしゃいますけど、子育てに関して悩みってあるんですか?
林真理子(以下・H)悩みというか、娘は少し変わり者だから、お友達ができるかすごく心配しました。
N お嬢さんも本が好きなんですか?
H 全然!本なんて1冊も読まないよ!なんでこんなに嫌いなのかな、と思うくらい。『赤毛のアン』を読みなさいって渡すと「こんなキレイごと。ふん!」とか言う。「ママの薦める本はキレイごとの世界!」って。本屋に連れていって買ってあげても読まないし、「本って嫌い」って。
N アハハ。面白いですねえ。でも、家には、ちょっと手を伸ばせば数々の名作があるわけですよね?
H でも手を伸ばさない。私『21世紀活字文化プロジェクト』という会で委員をやっていて、「親が本を読んで、本棚に本があれば子どもは必ず本を読むものです」なんて偉そうに言っていたのに間違いだった(笑)。
N アハハ。お母さんが偉大すぎるってこともあるんじゃないですか、活字に対して。
H 娘が小学生のときに「ママのことでいじめられたりしない?」って心配で聞いたら、薄ら笑いを浮かべられちゃってね、「なんで?なんで?ママのこと知っている人なんてだーれもいないよ!」って。「ママは自分のこと有名人と思っているかもしれないけど、周りで知っている人なんてだーれもいないから」ってぴしゃりと言われて。
N せっかく気を使って聞いたのに(笑)。子どもって親が思うようにはなかなかいかないものですよね。
H 本当にそうですよね。私は、教養を豊かに、文化的なものをたっぷり注いでやりたいと思って、子どものころからコンサートにオペラ、歌舞伎にミュージカルといろんなものに連れていったんですけど何ひとつ喜ばない。歌舞伎なんて連れていった日には「ママのこと一生恨んでやる」って。
N アハハ。ウチもそうです。全然ありがたがらない。まあ、いずれ今見ているものが血となり肉となるんじゃないですかね。
H そうであってほしいですけどねえ。でも、ああしてほしい、こうしてほしい、もっと成績よくなってほしいとか思ってもしょうがないし、上を見てもきりがないですもんね。友達と仲よく、毎日楽しく学校に行ってくれればそれでもう十分です。