「今だから話せますが、実は私は、タモリさんの司会起用には大反対だったんです」
こう告白するのは、プリティ長嶋(59)。長嶋茂雄のモノマネで知られる彼は現在、千葉県の県議会議員。3月31日で放送が終了する『笑っていいとも!』に、放送開始から出演していたが、オファーを受けるには大きな覚悟が必要だった。
「当時はまだ千葉県庁の職員でしたから。素人として単発の出演はセーフでしたが、レギュラー出演するとなると、退職しなければいけない。周囲の反対もありましたが、芸人の道を選びました。でも、公務員の職を捨ててまで賭けた番組の司会がタモリさんと聞いて、私は猛反対したんです。そのころのタモリさんは、深夜番組のイメージが強く、昼の顔には不適切だと。すぐ打ち切られるんじゃないかと不安でした」
まだ公務員だったプリティが、有給休暇を取って初回から3日間の『いいとも』をスタジオに見に行くと、悪い予感は見事に的中したという。
「アルタの雰囲気はどんよりとしていて、たまにサクラにつられた笑いが少し聞こえるだけ。放送後、スタッフに『だから、タモリさんじゃダメだって』と直訴しても、プロデューサーの横澤彪さん(故人)には『いいんだよ、ギャンブルだから』と言われました」
自分のコーナーも持ったが、タモリと共演し、違和感はさらに募っていくことに。
「視聴率5%以下が続き、2~3%の日も。タモリさんとはメイク室で社交辞令の冗談を言い合うくらいで、反省会でもほとんど口をきいていません。リハーサルもなく、多くはアドリブでタモリさんと絡んでいましたが、彼のことは認められないままでした」
しかし、3カ月が経ったころ、タモリに対する認識が一変することになる。
「視聴者からの手紙をもとに、タモリさんが『どんなスポーツが好きですか?』、私が『やはり野球ですね』と掛け合ったとき、スポーツをよく知らないのにタモリさんの突っ込みが秀逸だったんですよ。観客も爆笑で、『キタ!』と思いました。私たちの息が初めて合った瞬間でした。同時に『この人はすごい人だ!』と思いましたね」
翌週も同じテーマをやって大ウケ。コーナーの人気も高まっていった。
「その3カ月は、人生でもっとも大変でした。食事もまともに喉を通らず、睡眠薬代わりに寝酒を飲んでやっと寝ていました。その苦労が報われましたね。ただ、その後もタモリさんとの関係は変わりませんでした。プライベートでお会いしたこともないです。とはいえ、私にとって『いいとも』は、多くの意味で“人生のウェザー”(=転機)でした」