隔週連載〈中山秀征の語り合いたい人〉、今回は乙武洋匡氏(38)。現在は東京都教育委員を務める乙武さんの熱い思いを聞き出した。

中山「今日は乙武さんの母校である早稲田大学での対談になりました。乙武さんを一躍有名にしたのは、ご自身の著書『五体不満足』ですが、大学3年生のときに出版されたとか」

乙武「僕は学生時代に早稲田大学の周りにある商店街の街づくり活動に参加していたのですが、それが新聞やNHKに取り上げられて、本を出さないかというお話をいただいたんですね。思いもしなかったほど多くの反響がありました。障がいをお持ちのご本人やご家族から『明るく生きている人もいると知って楽になりました。頑張ります』という声をいただいたのはうれしかった。
 でも一方で、障がいを持っている方から批判的な声も寄せられて。『おまえが明るく楽しいイメージを強調したから、まだまだ自分たちのようにつらく苦しい思いをしている人に目が向けられなくなった」とか、『乙武さんだって楽しく生きているんだから、あなたも頑張りなさい、と同じような頑張りを強要された』とか。正直そんな意見がくるとは思っていなかったので、すごく考えさせられましたね」

中山「いろいろな立場や意見。捉え方があるということですよね。難しい問題ですね」

乙武「僕の障がいはものすごく大変そうに見えるかもしれませんが、僕は生まれたときからこの状態なので、自分ではそこまでつらいとも困難とも感じていないんですよ」

中山「それは乙武さんのもともとの性格もありますよね。基本明るい方ですよね」

乙武「小さいころから自分の足で歩いたり、字を書いたり、ご飯を食べたりしただけで褒められることも多かったですね。でも『”自分は障がい者だから何もできない”という前提があるから、自分だけが褒められるんだ』と思うと、褒められながらもどこか下に見られているような気もして、少し複雑な思いもあった。褒め言葉を自分の中で素直に受け入れるには、障がいの有無は関係なく、クラスでいちばん勉強ができるとかいちばん字がキレイとか、人より秀でてしまえばいいんだ、と思って勉強も頑張ったし。秀でてしまえば『障がい者なのに』っていう枕ことばが外れるだろうと思って」

中山「乙武さんは甘えない人?負けず嫌いなのかな?」

乙武「もちろん家族や親しい友人など身近な人間には、いまだに甘えてしまうところもあります。でも、世間的な評価ということに関しては、自分がいちばん厳しい目を自分に向けるようにはしてきました。障がい者だからという、下駄を履かせてもらうのを拒否し続けてきた部分はありますね」

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