今年に入ってから早や半年。沈黙を続けていたサザンオールスターズがデビュー36周年の6月25日に発表したのは、ファンが待ち続けていたものだった。ニューシングルの9月発売、そして9年ぶりの『年越しライブ』を行うと宣言。さらに05年の『キラーストリート』以来、同じく9年ぶりとなる新アルバムを年内に発売するとも明かしたのだ。
小雨が降りそそぐ6月下旬の昼過ぎ。東京都渋谷区にある『ビクタースタジオ』の前に、桑田佳祐(58)と“原坊”こと妻・原由子(57)が車で現れた。ここでメンバーたちはすでにアルバム制作へと取り組んでいるという。
スタッフが傘をさして迎えると、車内から出てくる2人。ピンクのTシャツにジーンズ姿の桑田は少し痩せているようにも見えるが、足取りは軽く元気そうだ。続いて出てきた原もメンバーとの収録を待ちわびているかのように、早足で夫の一歩後ろを歩いてスタジオへと入って行った。
この『ビクタースタジオ』で、サザンはデビュー以来数々の名曲を録音してきた。彼らにとって“聖地”ともいうべき地で、桑田にとっても思い出深い場所だ。しかし実は、この“聖地”が存続の危機にさらされていた。10年9月にスタジオの敷地が、大手鉄鋼会社に売却されていたのだ。音楽業界の不況が続き、レコード会社がスタジオを売却していく。そんな流れのなかで、ビクターエンタテインメントも手放すことを決意したという。
「ビクターは『スタジオ機能や業務に支障はない』と説明していました。しかし、ここをずっと使用してきたミュージシャンたちは、『このまま自分たちのスタジオがなくなってしまうんじゃないか……』と、不安の声を漏らしていました。その思いは桑田さんも同じだったと思います。彼は10年8月に食道がん手術を経験しましたが、4カ月後の紅白で復帰する際にこのスタジオから歌声を届けたのです」(音楽関係者)
だが、そんな彼の願いは意外な形で実ることに。今年1月、大手衛生用品メーカー『ユニ・チャーム』創業者・高原橋慶一朗氏(83)が代表を務める企業は「今後20年はスタジオとして使える」という契約条件でこの土地を買い取ったという。高原氏は米経済誌『フォーブス』が発表した「2014年日本の富豪50人」の9位にランクイン。その資産は、3千400億円以上だという。
そんな彼が行った、スタジオの存続を約束した形での土地取得。“聖地”の危機を回避してくれたことに、桑田もきっと胸をなでおろしたことだろう。