隔週連載〈中山秀征の語り合いたい人〉。今回のお相手は、世界で待たれるスタジオジブリ最新作『思い出のマーニー』の監督を務めた米林宏昌さん(41)。ここでは制作秘話を語ってくれた。
中山「『思い出のマーニー』はイギリスの児童文学が原作ということですが、原作を読んでどんな印象を持ちました?」
米林「原作はすごく面白いんですよ、感動的な話ですし。ただアニメーションにするには向かない作品だな(笑)」
中山「たしかに心の動きは絵にしづらそう」
米林「そうなんです。主人公、杏奈(あんな)のひとり語りで展開していきますし、心の描写でつづられていくお話なので、どうしたらアニメーションになるんだろうって。それで杏奈の性格を伝えるものとして、原作にない場面のイメージラフを描くうち自分が“この映画を見たい”と思うようになって」
ここで『思い出のマーニー』制作秘話を披露してもらおう。
〈1〉舞台は北海道。でも宮崎駿さんからのアドバイスは瀬戸内だった!
「宮崎さんは原作のファン。“瀬戸内に和洋折衷の屋敷があって……”など、宮崎さんの作品への思いを聞きましたが、作品のイメージから、舞台は北海道にしました」
〈2〉原作の杏奈は“絵を描く女の子”ではなかった!
「杏奈の性格を伝えるため、“絵を描く女の子”という設定を作りました。ほかにも“月夜の下のダンス”など原作にはないシーンを加え、作品を膨らませていきました」
〈3〉製作開始まで、脚本に1年、絵コンテに9カ月!
「前作(『借りぐらしのアリエッティ』)では既に宮崎さんの脚本があり、進行の都合上、自分なりに脚本を練ることができませんでした。前回のその反省点を生かし、今回は納得いくまで十分に練りました」
語り終えた後、中山は……。
「監督は独特の“間”を持つ人。その間は、ご自身の頭の中に生まれた映像を言葉に置き換えている時間なのかもしれません。きっと監督の頭の中にはいろんなものが言葉ではなく絵になっているんじゃないかなあ。やっぱり芸術家ですね。映画もこれまでのジブリ作品とは少し違うテイストです」