しっかり者の太川陽介とマイペースな蛭子能収のやりとりが好評な『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』。この夏の放送で、シリーズ18回を数えた。この番組をはじめとして、タレントによる独特の「旅番組」を次々と生み出し、ヒットさせているのが、『土曜スペシャル』(テレビ東京ほか・毎週土曜夜6時30分〜。以下『土スペ』)だ。
「ローカル路線バスの企画は、最初『移動手段はバス。3泊4日の日程内にゴールを目指す』という、今よりゆるい番組だったんです。それが、次第にルールを増やし、ゲーム性が強くなっていったんですよ」
そう語るのは『土スペ』を担当する越山進プロデューサー。話題の旅番組を数多く手がけてきた、まさに「仕掛人」だ。越山さんに『土スペ』人気番組の裏側を聞いた。
「『土スペ』の枠は当初、情報番組に寄った内容で、グルメの要素が強かったんです。行列のできるお店、漁師がやっている宿など、ひとつのテーマで全国5〜6カ所を紹介するというスタイルが、かつての主流でした。それが、だんだんと視聴率が厳しくなり、’00年ごろ、テーマをグルメから旅そのものに大きく変えたんです」
当時、テレビ東京では『いい旅・夢気分』(現『にっぽん!いい旅』)が好調だったため、『土スペ』もその路線に乗じたのだ。しかし、再び企画がマンネリ化。そんな中、’07年に始まったのが『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』だった。さらに、’08年には『街道歩きの旅』がスタート。乗り継ぎやリレー形式で、タレントがガチンコ旅に臨む企画が、思いがけず支持を得た。
「『土スペ』は旅番組というカテゴリーですが、言い方を変えれば、旅っぽくなっていれば、何でもアリ。そこで、旅番組でありながら、ドキュメント・バラエティに重点を置くようにしたんです。旅番組なのに、ネタによってはきれいな景色やグルメにあえてフォーカスしない(笑)。限られた日程で、出演者がゴールに挑戦するという、アドベンチャーゲームのような企画を増やしていきました」
反響があった企画は、次々とシリーズ化。また『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の人気を受け、『フェリー乗り継ぎの旅』のような番組も派生していった。疲労や時間と闘いながら苦悩してゴールを目指す企画のため、ふだんの芸能人の姿とは違った面を見ることができるのも、魅力のひとつだ。
だが、予想外の面白いシーンが撮れる一方で、予測できないため、リスクも高い。店の撮影をお願いしても、すべて断られてしまうこともあるとか。2時間半の放送時間の“撮れ高”がまったくない、ということも……!!
「リハーサルもできないので、『やったはいいけど、少しも面白くない。コレ、どうする?』っていうケースがあるんですよ(笑)。ロケ時間も長く、朝から晩まで撮影して、いつ終わるかもわからない。スタッフの宿探しは、出演者の宿が決まってからです。先が見えないので、同行スタッフは最小限にしています」
いまや人気番組の仲間入りをはたした『土スペ』の、今後はどうなる?
「タレント自らが撮影交渉をするものも、ほかの番組でやるようになってしまいました。また新しい切り口を考えないといけないですね。何が当たるかなんて、わからない。でも『そう来たか!』と、よそに思わせるものを出していきたいです」