「お芝居に音楽が入って、自分の感情が高まったときに歌い出す。ただ『彼女を愛しているんだ』と言うのではなく、オーケストラが演奏する美しいメロディの中で自分の感情を歌うことで、よりドラマが広がるというか……。初めて見たのは幼稚園のとき。それ以来、ずっとミュージカルが大好きなんです」

 こう語るのは、ミュージカル界の“三大プリンス”のひとりである山崎育三郎(28)。ミュージカル俳優になるという夢に向かって子供のころから活動を開始し、音楽学校で声楽やクラシックを学んだ。’07年に本格デビュー。その3年後、帝国劇場で初めて主演を張った作品が『モーツァルト!』だ。

「当時は稽古場から本番まで、毎日緊張していてあまり記憶がないくらい(笑)。がむしゃらに一生懸命やっているうちに終わってしまった印象です。孤独をかかえるヴォルフガング・モーツァルトという役もそうですし、音域の広い難しい曲が多く、舞台に出づっぱり。毎回すべてを出し切って精神的にも肉体的にも追い込まれていました」

 それから4年ほどがたち、同作が再び上演されることに。現在、帝国劇場で公演中だ。今回、稽古に入ると、感じ方が違っていたという。

「以前は、役と向き合うときに、自分自身を通してでしかできないと思っていたんです。家族、恋人、友人、誰にも理解されない中で『僕は僕なんだ』というモーツァルトのメッセージに、追い込まれていた自分が助けられた部分があったというか。今回は少し冷静になって、自分の置かれている状況や、表現する仕事であること、自分の意志と周りの声との違いだったり、違った目線から見られるようになっていました」

 ミュージカル俳優になる夢をかなえ、目標としていた帝国劇場での主演も務めた。この先に、何を見ている?

「この公演が終わったら29歳。来年20代が終わるので、今後はミュージカルをもっと多くの人に楽しんでもらうためにも、ドラマや映画など活動を広げていきたいと考えています。そしていつか、日本から海外に発信できるような本格的なミュージカル映画ができたら面白いと思いませんか?」

 楽しみに待っていたい。

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