「(彼女は)感情の起伏がない人なので、けんかにもならない。僕が一方的に怒って、言いすぎたなって思うことはありますけど、『はい、はい』って。最近は流し方も上手ですよ(笑)」
こう話すのは、現在EXシアター六本木で上映中の『六本木歌舞伎』に出演している中村獅童(42)。’10年に出会い、交際がスタート、このたび結婚を決めたというお相手は、30代の一般女性・沙織さん。当初から結婚を視野に入れた交際だった。
交際半年後には、母・陽子さんと沙織さんのご両親と食事会を敢行。さっそく結婚の話が持ち上がると、陽子さんは、「獅童を指導してください」と笑っていたという。そして別の場所で、もう1人喜んでいる人がいた。獅童の歌舞伎の大恩人である、十八代目・中村勘三郎だ。
「『彼女できた?』っていつも気にかけてくださっていたんです。彼女のことや食事会のことを話したら、『お前さんは本当に面白い男だね』ってゲラゲラ大笑いして喜んでくれて。結婚の準備を進めていくなかで、早く彼女を連れてご報告に行きたいと思っていました。あんなことになるとは思ってなかったから」
沙織さんを紹介できないまま、’12年12月に勘三郎さんが亡くなった。そして、結婚を延期することを決意した。
「勘三郎兄さんには、ものすごく恩義を感じています。梨園の世界で誰かに結婚を止められたこともなくて、むしろ早くしたほうがいいとも言われました。でも、兄さんの喪が明けるまでは、自分のなかでおめでたいことを控えたいという思いがあった。彼女もわかってくれました」
喪が明け、披露宴の打ち合わせをはじめた矢先に、母・陽子さんが死去。’13年12月、突然のことだった。
「出演作が続いていたので、彼女に東京の実家に来てもらい、母からいろんなことを教えてもらっている最中のことでした。亡くなる前の3〜4カ月、彼女は毎日一緒にいたんです。気にして『あまり相手にしなくていいよ』なんて言ったら、彼女は『お母様といると楽しい』と言ってくれて。母もどこかに行くとお土産の人形や、キティちゃんの枕を買ってきたり(笑)。娘ができたような感じだったのかな」
沙織さんをすっかり気に入り、獅童との結婚を誰よりも喜んでいた陽子さんは、ある日こんな行動に。
「亡くなる3日前の朝、バーッと階段を上がってきて、僕が寝ている前を白無垢をかぶった母が通りすぎたんです。寝ぼけていたし、『朝から何やってんだよ!』とすごく怒ってしまった。よくよく考えたら『もう結婚を許したし、これを着なさい』って白無垢や、自分が着たドレスを用意してくれていたんですよね。『ごめんね』も『ありがとう』も言えなかった。いまでも心残りです」
悲しい出来事や大変な日々を乗り越え、2人の絆が深まった。獅童は彼女の大切さを実感していたようだ。
「僕は一人っ子だし、母が亡くなったときは舞台にすぐ行かないといけない状況で、精神的にすごく荒れるかと思ったんですけど、彼女が支えてくれました。なかなか本人には言えませんが(笑)。付き合って5年、ずいぶんお待たせしてしまったと思います」